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生前贈与を非課税にする方法と気を付けること

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相続税の負担軽減方法と言えば、生前贈与をまず思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

生前贈与は相続税の課税対象となる財産を減らすことができるため、非常に有効な相続税の負担軽減方法の一つです。

当記事では非課税で生前贈与をする方法と注意点について解説していきます。

相続税と贈与税

 
相続税と贈与税はお互い補完しあう関係になっています。
相続税と贈与税について、最近の傾向について確認していきましょう。

相続税は増税傾向

相続税は平成27年に改正され、平成27年以降の相続については実質増税となりました。
特に影響が大きいのは基礎控除の減額です。
平成26年までは基礎控除の金額は5,000万円+法定相続人×1,000万円で算出していました。
一方、平成27年以降の基礎控除は3,000万円+法定相続人×600万円となっています。
例えば、法定相続人が3人の場合は8,000万円から4,800万円になります。
基礎控除は大幅に減額されてしまったので、これまでは基礎控除の範囲内で相続税がかからなかった方も相続税がかかってしまうことも多くなり、相続税の負担軽減対策を必要とする方が増えたということです。

贈与税は緩和傾向

相続税は増税傾向にありますが、贈与税は緩和傾向にあります。
例えば、平成25年には教育資金を1,500万円まで非課税で一括贈与できる制度が新設されました。
現在の日本は少子高齢化が進み、高齢者が金融資産を多く保有しているため、経済全体での資金の回転が悪くなっていると言われています。
そのため、政府は子どもや孫が有効にお金を使えるように若い世代への贈与を促すために、様々な特例を設け、贈与税を緩和しているのです。
 

非課税で生前贈与をする方法

 
生前贈与は仕組みを理解して計画的に行うことにより非課税で贈与をすることも可能です。
非課税で生前贈与をする方法を具体的に確認していきましょう。

一人に対する贈与額を年間110万円以内に抑える

贈与税の一般的な課税制度を暦年課税制度と言います。
暦年課税制度とは1年間に贈与を受けた金額に対して課税をする制度です。
贈与税の非課税枠は110万円ですので、年間110万円までであれば、非課税で贈与をすることが可能です。
贈与税は贈与を受ける人が受け取った金額によって課税されますので、贈与をした人がいくら贈与をしたかは関係ありません。
そのため、将来的に財産を遺したい人が複数いる場合には多くの人に贈与をすることで、相続税の課税対象となる財産を減らすスピードを早めることができます。
例えば、子どもが二人、孫が四人いるのであれば、子ども二人に贈与をする場合は年間220万円まで、孫も含めて贈与をする場合は年間660万円まで贈与をすることが可能です。
非課税で生前贈与を行って早く相続税の課税対象となる財産を減らしたい場合には多くの人に贈与をすることが重要です。

特例を利用する

生前贈与には様々な特例制度が設けられており、特例制度を使うことで、暦年課税制度の非課税枠である110万円よりも多くの財産を贈与することが可能です。
代表的な贈与の特例制度をみて行きましょう。

◆教育資金贈与の特例

教育資金贈与の特例は平成25年に新設された制度で教育資金を贈与する場合に限り、祖父母等から孫等に贈与をする際に1,500万円まで非課税となる制度です。
贈与した資金は教育資金贈与専用の口座として信託銀行等に預けられ、贈与を受けた孫(未成年である場合はその親権者)が領収書を提出して資金を払い出すことになります。
孫一人につき1,500万円まで非課税で一括贈与をすることができるため、これから教育資金がかかる孫がいる方はぜひ、活用したい制度です。

◆住宅取得資金贈与の特例

住宅取得資金贈与の特例とは子や孫等に住宅取得用の資金を贈与した際に一定額まで非課税となる制度です。
令和2年4月1日~令和3年3月31日までの贈与は1,000万円まで(省エネ等住宅の場合、1,500万円まで)、令和3年4月1日~令和3年12月31日までの贈与は700万円(省エネ等住宅の場合、1,200万円まで)まで非課税で贈与をすることができます。
住宅取得資金贈与も教育資金贈与の特例と並び、大きな金額を非課税で子や孫などの次の世代に贈与ができる制度です。
子や孫が住宅を取得する予定がある方は是非活用したい制度です。
 

生前贈与をする際の注意点

 
相続税の負担軽減対策としてメリットも大きい生前贈与ですが、注意しておくべき点もいくつかあります。
どのような点に注意をするべきか確認しておきましょう。

相続発生前3年以内の贈与した財産は相続税の課税対象

相続発生前3年以内に贈与された相続財産を受け取る人に贈与された財産には相続税に加算する生前贈与加算という制度があります。
そのため、病気などで死期が近づいてから贈与を行っても相続税の負担軽減対策にはならないのです。
生前贈与で相続税の負担軽減を行う場合は元気なうちから少しずつ行っていく必要があります。

名義預金は贈与したことにならない

子どもや孫の口座にお金を振り込んで名義を移していても贈与した祖父母などが通帳を保管するなど、実質的に財産を管理している場合は相続税の課税対象財産として、課税される場合があります。
このような預金を「名義預金」と言います。
祖父母などが孫に贈与した財産を無駄使いしないように通帳を保管して使えなくしておくというケースは多くあります。
しかし、これをしてしまうと税務署は実質的に贈与を行わず、形式的に名義を移しただけという名義預金として認定し、相続税を課税する場合があります。
生前贈与をする際は名義預金とならないように本質的な意味で財産を移転して、子や孫が自由に使える状態にしておくことが重要です。
 

まとめ

相続税は増税傾向にありますが、贈与税は緩和傾向にあります。
その理由は若い世代への贈与を促すことで、消費を促し、景気の循環を良くしようとしているからです。
相続税の負担軽減方法として生前贈与は非常に有効なので、相続税がかかりそうな人は検討してみても良いでしょう。
ただし、生前贈与には注意するべき点もいくつかあります。
生前贈与は仕組みをしっかり理解して行わないと十分な効果を得られないこともあります。
判断に迷う場合は税理士などに相談し、適切に対処するようにしましょう。