相続税と贈与税の改正内容とそのポイントは?

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令和元年、相続税及び贈与税の改正があった項目について整理をしてみましょう。

相続税法は、他の国税とは異なり1つの税法の中に相続税と贈与税という2つの税目が定められ、 「1税法2税目」と呼ばれる租税法です。

よって相続税法の改正にはもちろん贈与税も含まれています。

細かな項目はさておき、今回の相続税法改正の3本の柱は次のとおりです。

  • 個人の事業用資産についての贈与税・相続税の納税猶予及び免除制度の創設
  • 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の見直し
  • 民法(相続関係)の改正に伴う措置

さっそく、改正3本柱の内容を見ていきましょう。

相続税法の改正内容

まず、個人事業者の納税猶予制度と小規模宅地等の特例についてはどちらか一方の選択適用になります。

どちらも事業承継に係る制度で、どちらの制度も目的は事業承継の支援にあります。

また、民法の改正に伴う相続税法改正については多くの改正点があります。 大幅な民法の改正が行われたため、話題にもなっている論点です。

平成31年(令和元年)以降に施行される民法の改正のうち主なものは次のとおりです。

  • 配偶者に対する居住権の保護
  • 遺産分割の見直し
  • 遺言制度に関する見直し
  • 遺留分制度に関する見直し
  • 相続の効力等に関する見直し
  • 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

これらの民法改正に伴い、相続税法も改正が行われたわけです。

事業用資産に対する相続税や贈与税の納税猶予制度の創設

改正3本柱の1つめは、納税猶予です。

相続税・贈与税が一定の場合には納税が猶予され、さらに免除される新しい制度です。

青色申告である個人事業の継続については、特定の事業用資産に係る贈与税・相続税が全額「猶予」され、その後継者の死亡等、一定の事由により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納税が免除されるものです。

これは法人だけでなく、個人事業者についても事業承継の後押しする制度です。

相続税のみならず生前贈与にも適用可能とする制度でもあります。

なお、特定の事業用資産とは、宅地、建物、自動車や機械その他償却資産で要件を満たすものです。

小規模宅地等の減額の特例の要件見直し

「小規模宅地等の特例」と呼ばれるこの制度は、節税を目的とした相続直前の駆け込み的な適用の防止策として見直されました。

相続により取得した宅地等が被相続人等の事業用であった場合、相続税評価額を80%減額できるという制度です。

しかし、この80%減額を適用したいがために、相続が開始される直前に事業用に利用し始めるというケースもでてきました。

そこで、今回の見直しでは、相続人による事業継続の支援という本来の趣旨から逸脱した適用をさせないよう、相続開始前3年以内に事業の用に供するものを除くとされました。

駆け込み適用の禁止です。

民法(相続法)の改正による見直し

そもそも民法は5つの編に分けて整理されている法律体系です。

民法第5編には人が死亡した場合に、その人の財産がどのように受け継がれるかなどに関する基本的なルールが定められています。

この部分は「相続法」と呼ばれています。

相続法は、昭和55年に改正されて以降、大きな改正は行われていませんでしたので約40年ぶりの大きな見直しとなりました。

この40年間にわが国の平均寿命は延び、高齢化が進展し、社会経済に大きな変化が生じているため、この変化に対応するための改正と言えます。

この民法(相続法)の改正を受けて、課税のルールである相続税法も改正が行われました。

相続税法の主な改正項目は次のとおりです。

①配偶者居住権が設定された場合の相続税評価

特別寄与料の額が確定した場合の課税

遺留分制度の見直し

 

民法(相続法)改正による相続税法の改正

上記相続税法の改正について、①は民法の施行が令和2年4月以降の相続から施行されるため解説は別の機会に譲るとして、令和元年7月1日に施行される2つ、②特別寄与料と③遺留分制度の見直しについて解説します。

特別寄与料の額が確定した場合の課税

従来の民法では、被相続人の長男の嫁などの相続人ではない親族が、被相続人の生前に介護や看病などでいくら尽くしても、相続時に遺産の分割を受けることができませんでした。

実際に被相続人の世話をしなかった長女などには法定相続分があっても、嫁の立場ではいくら尽くしてもなにも請求できないのは不公平ではないかという指摘がされてきました。

そこで、相続人以外の被相続人の親族が無償で被相続人の療養看護等を行った場合には、相続人に対して金銭の要求が認められるというものです。

被相続人に対する貢献について、相続分を増やすことを「寄与分」といい、この場合の長男の嫁にあたる人を特別寄与者といいます。

相続税法では、特別寄与者には、被相続人から遺贈により取得したものとみなして、相続税が課税されることになりました。

遺留分制度の見直し

遺留分制度とは、一定の相続人に対して保障する制度です。

例えば、残された妻がいるのに「私の財産はすべてA法人に寄付する」という遺言書があった場合、妻は生活の保障がなされません。

そこで、妻に民法上保障されている権利が「遺留分」なのです。

妻は、「遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)」という手続きにより、最低限の相続財産を取得することができます。

今までの民法では、この請求をすると相続財産を共有することとなり、事業承継等の障害が発生する場合がありました。

そこで、遺留分の請求を金銭の支払いとして請求できることになりました。

遺留分を金銭でもらえたら、計算も簡単で不動産等が共有になることもなく、すっきりします。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

ここまでのポイントをまとめますと、令和元年の相続税法改正では、

  • 個人事業者の納税猶予制度の創設と小規模宅地等の特例が見直されたが、どちらも個人事業の承継を支援する制度である
  • 民法(相続法)の改正による相続税法の見直しにおいて、 - 無償で被相続人の介護等で貢献した長男の嫁などの「寄与分」が認められることになった - 相続人に対して保障される「遺留分」を金銭の支払いとして請求できるようになった

となるでしょう。 今回の改正で、特別寄与分が認められたのですが、一定の親族に限られています。

実は、内縁や事実婚による関係において、被相続人に貢献した人たちもいるのではないでしょうか?

法律や適用条件は複雑になると思いますが、被相続人を最後まで真心で思いやった人に「寄与分」を認めるまでにはまだ道のりはありそうですね。