グッドエフェクト税理士法人 > 記事一覧 > 遺産分割調停はどのように進める?期間や回数は?
相続人たちの間で遺産分割協議に時間がかかることはよく考えられることです。
実は、兄弟など仲の良かった親族ほど相続争いとなる場合が多いという現実があります。
相続人の誰か一人でも遺産分割協議に合意しない場合、どのように遺産分割をすすめたらよいのでしょうか?
遺産分割協議が成立しない場合には、裁判所を通じて遺産分割の方法を決めることになります。
遺産分割調停とは、遺産分割について相続人間で話し合いが成立しない場合に利用できる手続きのことで、意見の合わない相続人のそれぞれから事情を聴いた裁判官と調停委員によって、互いの妥協点を見出す方法です。
調停においては、裁判官と調停委員が対立する双方から事情を聴き、必要に応じて求められた資料等を参考に、遺産について専門の立場から鑑定を行います。
相続人それぞれがどのような分割を希望しているかを聴取し、解決案を提示したり、助言をしたりして合意が進められます。
争いの中に第三者を入れ、冷静な立場から当事者を説得できることができるため、調停での解決は非常に有効だと言えます。
遺産分割調停の手続は、家庭裁判所に遺産分割調停事件として申請します。
この調停は、相続人のうち1人でも申し立てることができます。
申し立てに必要なものは、遺産分割調停申立書、遺産目録(土地、建物、現金、預貯金、株式等)、当事者目録、その他必要とされる添付書類などです。
遺産目録は、調停手続き中に判明したものがあれば後から追加することができます。
遺産分割調停に必要な費用は、被相続人1人につき収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手などです。
ここで注意したいのは、どこの家庭裁判所に申し立てるかということです。
申し立てができるのは、相手の住所地にある家庭裁判所か、当事者同士が合意した家庭裁判所であり、これを管轄といいます。
相手が複数いる場合には、その相手のうちの一番近い家庭裁判所でよいでしょう。
調停の申し立てにより、提出した書類に不備がなければ受理され、「事件番号」が付され調停の開始となります。
第1回目の調停期日は申立人と家庭裁判所の協議により決定します。
候補日はだいたい1~2か月先の日を勧められることが多いようです。
東京家庭裁判所などのような大規模なところでは、案件が多いため待たされることもあるようです。
調停の第1回期日が決まると、調停日程について家庭裁判所から相手の相続人へ郵送等で伝えられ、出席が求められます。
しかし、相手の相続人の日程が合わない場合には、その次の第2回期日の調整をします。
遺産分割調停は、家庭裁判所における「調停委員会」が主催することとなっています。
調停委員会は、1名の裁判官と2名以上の調停委員とで構成されます。
調停委員は、豊富な社会経験をもつ人や専門的な知識を有する人から選ばれます。
第2回期日は、案件によって課題が多い場合は数か月先になることがありますが、おおむね1ヶ月先に調停委員、申立人、相手の相続人の全員が出席可能な日が設定されます。
しかし、当事者が多数の場合には主たる当事者の日程を優先することがあります。
申立人が提案している調停内容に異存がない相続人は、必ずしもこの調停に出向かなくとも文書等で応じる方法もあります。
しかし、申立人と意見が対立する相続人は、調停の席で意見を述べることが求められます。
調停がまとまると調停調書が作成され、「債務名義」と呼ばれる強制執行をもできるような効力を持つ文書となります。
調停が成立した以上は、調停調書通りの遺産分割をせざるを得ません。
調停成立までの期間は、当然ながら事案内容次第です。
早ければ3回くらいで調停成立に至ることもあるようですが、解決までに数年を要する事案もあります。
遺産分割調停が成立すると、家庭裁判所において相続人全員が集められ、裁判官から調停による合意内容が読み上げられます。
相続人全員がその内容で間違いがないとなれば、その内容に従って調停調書が作成されます。
調停調書は、確定判決と同じ効力があるため、遺産分割協議書の代わりとなります。
したがって、この調書において遺産の分割に関する金銭の支払や建物の明渡しなどの行為をすることを決めれば当事者はこれを守る義務があります。
もし一方がその行為をしない場合には、もう一方は調停内容を実現するために強制執行を申し立てることができます。
統計によりますと、平成30年度の遺産分割調停の成立件数は6,683件とのことで、遺産分割事件数総数の約半分となっています。
平成29年のデータによりますと遺産分割事件において、平均審理期間は11.2カ月で、ここ数年間は解決までに1年程度で推移しており、長期的に見れば短縮傾向にあるとのことです。
ここで平均審理期間とは、裁判所が事件を受理した日から終局日までの平均期間をいい、調停だけの期間ではありませんので、調停だけだともう少し短くなります。
また、最近の遺産分割に関する事件の傾向としては、高齢化の影響等により新受件数(審判+調停)が増加傾向にあるようです。
参考:裁判所ウェブサイト 第7回迅速化検証結果の公表に当たって(p43参照)
遺産分割について、話し合いがまとまらず調停が不成立になったときは、そのまま審判手続が開始されます。
調停に引き続き、裁判官が遺産に属する物又は権利の種類及び性質その他一切の事情を考慮して審判をすることになります。
ここまでのポイントをまとめますと、
相手方の相続人が遠方に住んでいる場合など、調停の手続きをしても相手方の家庭裁判所に行くのは大変です。
交通費だけでなく、仕事を何日か休むことに負担を感じることもあるかと思います。
そんなときには、テレビ会議システムを利用できることがあります。
これだと、遠隔地でも調停に参加できて便利です。
裁判所の設備も進化してきていますね。