グッドエフェクト税理士法人 > 記事一覧 > 相続放棄しても借金は相続される?その対処法は?
相続放棄をすると他の相続人に影響があります。
相続人が次々に放棄をすると、債権者は放棄していない人へ取り立てに行くので、結局取り残された人が故人の借金などを支払うことになります。
支払対象となるのは単なる借入金だけではなく、よくあるケースとしては故人が入院していた病院への支払や税金、携帯代などがあります。
支払ってよいものでしょうか?
また、故人または相続人が借金の連帯保証人となっている場合はどうなるのでしょうか?
今回は、相続放棄におけるこれらの注意点についてみていきましょう。
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相続放棄について受理の審判が終われば、家庭裁判所から「申述受理通知書」が送付されます。
この審判は相続放棄の意思表示を裁判所が公証する行為であるとされています。
つまり、受理の審判というのは相続放棄を確定させるわけではなく、相続人の放棄の意思表示があったことが公に証明されたという意味なのです。
したがって、もし相続放棄の要件が不十分な場合には、債権者が裁判を起こして相続放棄の効力を争うことができるわけです。
相続放棄の「申述受理通知書」は、文字どおり、相続放棄を受理したという扱いなのです。
債権者は身近にいるもので、たとえば故人の支払うべき税金や入院費用等々の請求もこれに該当します。
相続放棄の意志があるのであれば、これらへの支払いをしてはいけません。
故人の財産からの支払いをすれば、単純承認したものとなり相続放棄が認められない可能性があるからです。
債権者から強く返済を迫られると冷静な判断が難しくなりますが、要注意です。
故人の債権者へは「申述受理通知書」のコピーを送ります。
これによって、債権者は相続放棄があったことを知り、請求ができないことを確認するのです。
相続放棄の手続き中に、債権者の申し立てにより裁判所から「訴状」や「呼び出し状」が来ることがあっても、家庭裁判所での相続放棄の手続きが妨害されるようなことはありません。
金融機関や貸金業者から借入をするとき、連帯保証人を付けることを求められることがあります。
連帯保証人になると、債権者から請求があったとき、主債務者から先に請求するように求める権利はありません(催告の抗弁権がない)。
そして、主債務者に返済するお金があったとしても、債権者の請求に反論できず(検索の抗弁権がない)、さらに連帯保証人は一人一人がその債務の全額を保証しなければなりません(分別の利益がない)。
つまり、連帯保証人とは債務者とほとんど同じだということです。
さて、ここでは相続放棄において、連帯保証人が関係しているケースを考えていきましょう。
まず、故人が相続人以外の第三者の連帯保証人になっていたとします。
この場合、相続人が相続するのは、保証契約に基づく「連帯保証人としての義務」となります。
ここで相続人が相続放棄をすれば、故人が負っていた義務を引き継ぐことは無くなり、連帯保証人としての借金の支払い義務からも逃れることができます。
このケースは相続放棄が有効となります。
次に、相続人が故人の連帯保証人になっていたケースはどうでしょうか?
相続人にはその相続とは別に、保証契約に基づく連帯保証人としての義務があります。
この連帯保証人としての義務は、相続人本人が元から負担していたものであり、相続により引き継いだものではありません。
よって相続放棄をしても、相続人の連帯保証人としての義務は何も変わりません。
連帯保証人とは、債権者と連帯保証人の間の「保証契約」により成立するものです。
故人と債権者との間の借入金に係る契約とは別の契約です。
したがって、相続が保証契約に影響を与えることはないのです。
このケースにおいては、相続放棄により故人の借金を免れることはできません。
故人が連帯保証人となっていたケースでは相続放棄が有効となりますが、そもそも故人が連帯保証債務を負っていたかどうかを事前に調査するのは難しいと言わざるを得ません。
故人が自営業や会社の代表であった場合、会社の借金についての連帯保証人となっている可能性もあります。
この連帯保証債務があるかどうかも含め、専門家に相続について相談することをお勧めします。
相続放棄の申立期間についても、正当な理由があれば伸長、再伸長は認められますのですぐにあきらめないようにしましょう。
ここで、相続人が故人に連帯保証があることを知ったとき、すでに相続放棄の申し立て期限を過ぎていた場合を考えてみましょう。
結論から言いますと、相続放棄の申し立て期限を過ぎても、相続放棄が一切認められないわけではありません。
故人が借金の連帯保証人になっていたことを知らなかった等特別な事情があれば、家庭裁判所に説明することにより、相続放棄が認められる可能性があります。
ただし連帯保証人の地位を引き継いだことを知ってから3か月以内に申し立てる必要があるため、いずれにしても素早い対応が必要となります。
いかがでしたか?
相続放棄を考える時には、請求書や借入金など目に見えているものだけを気にするのではなく、いろんなケースを想定して調査することが必要だということが伝わりましたでしょうか?
今回のポイントをまとめると、
やむを得ず相続放棄をすることになっても、故人の死亡保険金、死亡退職金、遺族年金などは受け取ることができます。
これらは相続の対象ではないからです。
相続放棄をするにあたっては、これらの総合的な結果を冷静に判断することが求められるといえるでしょう。