グッドエフェクト税理士法人 > 記事一覧 > 贈与税と相続税の税率は?2つの違いについて知ろう

贈与税と相続税の税率は?2つの違いについて知ろう

記事一覧

年老いた親の財産、それを親の生前にもらうのと亡くなってからもらうのと、どちらが税金を少なくできるのでしょうか?

贈与税や相続税が複雑と言われる理由の一つは、誰が誰に財産を渡すのか、何を渡すのか、いつ渡すのか、どのように渡すのかによって取り扱いが違ってくることです。

ここでは簡単な事例を交えながら、贈与税と相続税でどのように違うかを見ていきましょう。

関連記事:相続税と贈与税、負担が小さいのはどっち?税率や算出方法を解説

 

贈与税と相続税の税率

平成27年に相続税が改正されたことに伴い、贈与税も改正が行われました。

この改正により、贈与税の税率は10%から50%の6段階であったものが、10%から55%の8段階に改正されました。

相続税の税率も10%から55%の8段階で、どちらも課税対象が増えるほど、より高い税率を課する累進課税を採用していますが、この2つの税金の税率は大きく異なります。

たとえば、課税対象1,000万円に対し、贈与税は40%、相続税は10%といった具合です。

なぜ、このように大きく異なるのでしょうか?

ここでは、相続税と贈与税の関係からこの2つの違いを見ていきたいと思います。

贈与税と相続税の関係は?

相続税とは、相続等により財産をもらったときにその財産に課される税です。

贈与税とは、個人から財産をもらったときにその財産に課される税です。

要するに、相続、つまり亡くなった人からもらうか、生きている人からもらうかが異なるのであって、どちらも個人からもらった財産です。

「相続税を避けるためには、生前に贈与をすればいいのでは?」と思われがちですが、生前贈与をした分は相続税の対象から外れはしますが、贈与税の対象となってしまいます。

この生前贈与により相続税の課税逃れを防ぐために、贈与税が設けられています。

いわば、贈与税は相続税を補完する役割を果たしているのです。

これらの税金の考え方は相続税法にありますが、この相続税法は一税法二税目といわれ、1つの税法の中に相続税と贈与税の2つの税体系が記載されているのです。

さて、この密接な関係にある贈与税と相続税について事例で見ていきましょう。

贈与税と相続税の事例

ここで、実際にそれぞれの税金がどのように計算されるかについて、事例をもとにみていきましょう。

亡くなった人からもらうお金と生きている人からもらうお金のそれぞれの税金の計算方法を紹介します。

一人っ子のAさん(27歳)は父親を亡くし、母親Bと2人暮らしでした。

ケース1:母Bは生前贈与としてAさんに現金1,200万円を贈与しました。      

母親BはAさんに初めての贈与をしたものとします。

ケース2:母Bは生前贈与としてAさんに現金1,200万円を贈与しました。

ところが、母Bはその年内に亡くなってしまいました。

ケース3:母Bが亡くなり、Aさんは母Bの預金1,200万円を相続しました。      

他の財産はなく、相続人はAさんだけだったとします。

ケース1では、贈与税が発生します。

この場合は、直系尊属である母Bからの贈与ですので、基礎控除の他に、特例税率40%と累進課税による控除190万円が適用されます。

(1,200万円-基礎控除110万円)×40%-控除額190万円 = 246万円

ケース2も贈与税計算をするなら、ケース1と同じです。

しかし、相続税法においては、相続開始年の贈与については、贈与税は非課税となります。

したがって、このケースでは贈与税はなく、その現金1,200万円は相続税の課税価格に加算されることになります。

ケース3では、相続税の計算対象となります。

しかし、この場合の基礎控除は3,000万円+600万円×1=3,600万円となり、控除額の方が大きいため相続税は発生しません。

「贈与という行為」そのものが、生前に贈与しておきその後の相続税を回避するために行われる行為として位置づけられている以上、税金を高めに設定せざるを得ない仕組みなのです。

しかしながら、この3つのうち、ケース1のみ多くの税金を支払うように見えますが、贈与税には特例がいくつかあり、条件によっては特例を適用することができます。

例えば、母Bは、Aさんが省エネ対応の新しいマンションを購入するための資金として1,200万円贈与された場合だと、非課税の特例を受けることができ、贈与税は課税されません。

また、Aさんは新たに学校にいくための資金として1,200万円贈与された場合でも同様に、贈与税は非課税となります。

これら贈与税の非課税の特例適用には、証拠となる資料や詳細な要件があり、贈与税の確定申告書を提出することが必須とはなりますが、税金はかかりません。

相続時精算課税制度の場合は?

上記でとりあげた一般的な暦年(れきねん)課税、つまり、1年ずつ贈与した金額に対して税金を課す制度以外に、相続時精算課税制度があります。

ケース1でAさんが相続時精算課税制度を選択していたと仮定したら、贈与時には贈与税は発生せず、将来の相続税発生まで持ち越します。

この場合の手続きとしては、まず予めこの制度を適用するための届出書を提出し、贈与があった都度、贈与税の申告書を提出しなければなりません。

さらに、一度この制度を適用すると、相続税が発生するまでこの制度をやめることはできません。

届出をする前によく検討する必要があります。

Aさんは母Bから他に何かもらっても、暦年課税で使えた基礎控除110万円は使えなくなるのです。

この制度は、2,500万円まで非課税となることは大きなメリットですが、手続きが煩雑なことと、基礎控除110万円が使えないことがデメリットであると言えるでしょう。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

贈与税は、それだけを切り取って考えるのは難しく、相続税とセットで考える税金だということが少しでも伝わりましたでしょうか?

特に、贈与税の相続時精算課税制度は、贈与税を非課税にしておいて相続税で精算するという2つの税の関係性がよくわかる制度だと思います。

ここまでのポイントをまとめますと、

  • 贈与税の税率は非常に高い
  • 贈与税は相続税を補完する役割を果たしている
  • 贈与税は実際の計算によっても相続税より高い
  • 贈与税の相続時精算課税制度の適用はよく検討を要する

となるかと思います。

2019年度においては、贈与税の非課税の特例の期限が延長されましたが、贈与される人の条件が厳しくなりました。

しかしながら、少しでも早いうちに若い世代が資金を有効活用することは経済の活性化にもつながります。

これらの制度を理解して、先代の財産を賢く使う納税者でありたいものです。