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遺産相続が不動産のみの遺産分割協議について

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遺産分割において、現物分割とは財産をそのまま各相続人が取得する方法による方法です。

しかし、相続財産として残されたのが不動産だけだった場合、どのように考えればよいのでしょうか?

相続人2名に相続財産として土地が2筆あったとしても、その2つが全く同じ価値の土地であるはずはありません。

このように不動産だけが相続財産であった場合、相続人たちはどのように考えればよいのでしょうか?

法律における不動産の取り扱い

最初に法律では不動産をどのようにみているかをおさらいしておきましょう。
民法86条1項では、不動産とは土地やその土地に定着しているものとされています。
主として、土地や建物です。
また、土地上の建物は土地と別個の不動産として扱われることとされ、さらに土地に対する権利は所有権だけでなく、その土地を利用する権利(借地権)も不動産となります。
そして、不動産は登記をする必要があります。
自分の所有する不動産を誰に対しても自分のものであることを主張するため、登記をすることによって不動産売買や不動産を担保にするときの安全性を確保します。
不動産登記は義務ではありませんが、登記をしないことで不利益となったり、取引に時間を要したりすることは多々あるでしょう。
所有する不動産については、法務局の帳簿に「どこに、どんな不動産があり、所有者は誰か」などの情報が記録され公開されます。
相続においてこのような特徴をもつ不動産だけが遺産だった場合、分割にどんな方法があるのかを見ていきましょう。

 

不動産だけの遺産分割協議

遺産分割協議書は、「誰が、どの財産を、どれだけ取得するのか」を相続人の間で明確にし、相続税の申告書と共に税務署へ提出したり、相続登記のために法務局に提出したりします
不動産だけが遺産として残り、相続人の協議が進まず、うまく分け合えないときに考えられる案として、次の3つの方法があります。
  • 共有相続
  • 代償分割
  • 換価分割
さて、どれがよいのでしょうか?
例として左のようなケースで母と子ども2人が被相続人である父名義の不動産を分割する際にどのようなことが起こるかを見ていきましょう。
持分は分割協議で自由に決めることができますが、このケースでは法定相続割合で母1/2、子どもがそれぞれ1/4ずつ分割できればいいと考えていると仮定します。

権利関係が複雑になる共有相続

不動産の「共有」とは1つの不動産を複数の人が割合で所有することです。
各共有者の持つ所有権の割合を「持分 (もちぶん)」といいます。
左のケースの場合には遺産分割協議書に母は1/2、子1、子2はそれぞれ1/4ずつの割合で取得することを書き入れます。
それぞれ取得する各共有者は、持分に応じて共有物の全部を使用する権利がありますので、当面の生活は変わりません。
不動産の共有者は、それぞれの持分について登記することになります。
共有について気をつけたいのは売却時です。
例えば、将来子どものどちらかが金銭的な理由で、自分の持分を売却したいとします。
持分については、共有者は自分の持分について「使用・収益・処分」の権利がありますので、自分の名義部分だけであれば、他の共有人の同意がなくても自由に売却することは可能です。
しかしながら、自分の持分を他の共有者に売却する場合を除き、第三者に自由に利用できない制約付きの共有不動産を売却することとなり、相場よりもかなり安くなることが多いでしょう。
したがって、現実的には次の代償分割か換価分割となるでしょう。
続けて見ていきましょう。

お金を払って清算する代償分割

「代償分割」とは、相続人の1人が財産を取得し、他の相続人にお金を払って清算する分割方法です。
まず、遺産である不動産を1人の相続人が相続します。
そして、他の相続人へそれぞれ「代償金」として支払う旨を遺産分割協議書に記載するのです。
左のケースでは不動産を取得した母が相続人である子どもたちに対して、債務を負担するという形で精算するのです。
代償分割は、比較的公平に遺産分割ができる方法ではありますが、対象となる不動産の評価でもめることが想定されます。
また、不動産を相続した相続人に代償金として支払うお金がないと利用できない分割方法です。
代償分割は愛着のある不動産を手元に残すことができますが、清算するお金がない場合には次の換価分割が現実的でしょう。

現金に換えて相続人で分割する換価分割

「換価分割」とは、相続財産である不動産を売却し、現金に換えて相続人で分割する方法です。
換価分割の手続きとしては、不動産の売却をするため、登記手続き上、一旦相続人の誰かがその不動産を取得し、その後売却することになります。
この不動産の取得においては、相続人が一人でなくとも各相続人に名義を割り当てる(共有名義)でも問題ありません。
換価分割の場合、登記名義を相続人の誰にするかを遺産分割協議書で明らかにした上、換価する不動産を記載し、そこから売却諸経費を除いた残額を相続人でどのように分割するかを書き入れることとなります。
また、換価分割で気をつけたいのは売却による譲渡所得税です。
売却時にその不動産に居住していなかった場合には譲渡所得税が課税されます。

 

まとめ

ここまでのポイントをまとめますと、
  • 不動産は土地、建物だけでなく土地を利用する権利なども含まれ、登記によって第三者に所有権を主張できる。
  • 相続財産として不動産を分割する案として、次の3つが考えられる。
共有相続
メリット:それぞれが不動産の全部を利用できる
デメリット:持分の売却が困難
 
代償分割
メリット:比較的公平に分割することができる
デメリット:不動産の評価が問題、代償金が必要となる
 
換価分割
メリット:全員が公平な分割を受けることができる
デメリット:不動産を手放すことになる、譲渡所得税に注意
 
となります。
大切な不動産の相続を一度に決めることが困難な場合もあるかと思います。
そして、相続するにも売却するにも税金のことも気にかかります。
そのようなときは、専門家のアドバイスを受け、相続人同士で納得いくまで話し合い、やむを得ない場合には相続放棄という手もあることを心得ておきましょう。