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生前に相続放棄はできない!対処法など解説

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相続において遺産の中に借金が含まれている場合には、相続放棄をする選択肢があります。

高齢の親が借金を背負っているのを知っていれば、なんとか生前のうちに来るべき相続に備えて手を打ちたいもの、つまり、事前の相続放棄はできないものなのでしょうか?

ここでは、生前に何ができるかを考えてみましょう。

関連記事:遺産を相続放棄したいときの3つの注意点と手続きの流れを徹底解説!

 

生前の相続放棄はできない?

結論から言いますと、生前の相続放棄はできません。

なぜなら、相続は被相続人の死亡によって開始するものだからです。

開始されていないものをなかったことにすることはできません。

そして、詐欺や強迫による生前の相続放棄を防止するためにも生前の相続放棄は許されていないのです。

 

遺留分の放棄とはなにか?

相続においては、「遺留分」という考え方があります。

遺留分とは、最低限保証されている相続人が相続財産を取得する権利のことです。

この遺留分、つまり法律で最低保証されている相続人の権利さえ放棄するという方法があり、これは生前においても認められます。

このあえて利益を放棄するような手続きをしておくことによって、相続発生後に想定されるトラブルから免れることができます。

もっと言えば、他の相続人から「遺留分をよこせ」と言われるリスクがなくなります。

想定される煩わしい争いから回避することができるのです。

遺留分の放棄は、相続発生後の手続きでもできますが、相続開始前に遺留分を放棄するには、家庭裁判所の審判が必要となります。

法律で守られた遺留分について、その放棄を無制限に認めてしまうと、財産を残す側や他の相続人の強要が行われるという恐れがあるためです。

そこで、家庭裁判所は次の3つの点について遺留分の放棄の審査をします。

  • 遺留分の放棄が本人の自由意志に基づくものであること
  • 遺留分放棄に合理的な理由とその必要性があること
  • 放棄と引き替えの代償はあるかどうか

このように、遺留分の放棄の申し立てがあった場合には、どのような理由であるのか、その理由が正当かどうかということを家庭裁判所で厳格に審査することとなっています。

相続放棄と遺留分放棄の違い

相続放棄と遺留分の放棄、これらはどう違うのでしょうか。

まず、相続放棄は最初から相続人ではなかったことになります。

相続人ではありませんので、遺産に関しては一切の処分ができなくなります。

一方、遺留分放棄では、あくまで法律上最低限の保証がされている「遺留分」を放棄することですので、相続人としての地位は残ります。

要するに、相続放棄と遺留分の放棄との違いは、相続人の地位を失うか、失わないかなのです。

したがって、例えば遺言により、ある財産の分割があった場合は、遺留分を放棄してもその財産を受け取る権利は残るのです。

 

その他の生前相続対処法は?

では、生前の相続対策として遺留分放棄以外に何があるのでしょうか?

また、相続放棄に備えて留意することはあるでしょうか?

債務整理方法について

生前の対処法としては、そもそも借金に過払い金が発生していないか、また最後の支払日から一定年数を経過したものでないかを確認しましょう。

過払い金とは、支払う必要がないにもかかわらず、カードローン・キャッシングで支払い過ぎていたお金で、長期にわたって借金返済を続けてきた方は過払い金が発生している可能性もあり、借金を完済したり、減額したりすることができます。

また、時効により借金が消滅していることも考えられます。

これら過払い金や債務の時効については法律の知識が必要となりますので、債権者等への連絡については専門家に委ねるほうが安心です。

消費者金融やクレジットカードを利用していたときは、専門家に調査を依頼したほうが無難です。

そのほかの対処法としては、遺言書の作成などが挙げられます。

 

相続放棄を有効にするために

生前にできる相続対策としていくつかを挙げてきましたが、諸案検討の結果、相続放棄することになった場合の留意すべきポイントを挙げておきます。

土地の上に老朽化した家があった場合、先に取り壊ししてよいでしょうか?

火災や害虫の問題等もあるのですが、相続放棄が認められるまで取り壊してはいけません。

なぜなら、これらの行為は相続すると認めた行為(単純承認)とみなされるためです。

単純承認にあたることをすると相続放棄はできなくなってしまいます。

ブランド品のバッグなどを売却し、換金した場合も同様です。

相続放棄は全財産が対象ですので、可能性がある場合は、財産には手をつけないようにしましょう。

まとめ

いかがでしたか?

生前における相続放棄について大まかにポイントをまとめると、次のようになります。

  • 生前の相続放棄はできない
  • 遺留分の放棄は生前にも可能。煩わしい相続争いから回避する方法である
  • 遺留分の放棄をしても、相続人としての立場は失わない
  • 生前の債務整理や遺言書の作成は後のトラブルを防ぐ
  • 相続放棄を検討するなら、遺品に手を加えてはいけない

相続放棄について、いくつかお話してきました。

最後に、一つのケースをご紹介します。

故人の借金が相続発生から数年後に判明した場合です。

この場合には相続財産が全くないと信じたことに「相当の理由」があるときは、相続財産(特に債務)を認識したときから3ヶ月以内に手続きすれば、相続放棄が受理されることもあるのです。

相続により多額の借金を抱えることとなった場合でも、最後まであきらめることはありません。