グッドエフェクト税理士法人 > 記事一覧 > 相続財産はどう分ける?遺産分割から相続登記までの流れ
親や兄弟が亡くなったとき、自分やほかの親族が相続人に当たる場合はお互い合意の上で遺産分割しなければなりません。
金銭が関わる問題なので、「誰が何をもらうのか?」「遺産相続手続きはどうやるのか?」と不安がふくらんでしまうものです。
遺産を巡るトラブルを回避するには、生前に遺産の分け方を知り、ある程度のことを決めておくといいでしょう。
ここでは、もしものときのための遺産分割から相続登記までの流れを詳しく解説いたします。
人が亡くなったときに残された遺産を、相続人同士で分ける手続きが「遺産分割」です。
相続手続き上亡くなった人のことを「被相続人」、相続を承継する側は「相続人」と呼び、主に遺書が残されなかった場合に「遺産を誰がどう受け取るか」を話し合います。
必ず遺産分割しなければならないということではなく、期限も設けられていません。
しかし、土地や建物を共有し続ける「共有分割」にするには相続人全員の同意が必要となり、相続人を決めなければ相続自体の手続きができなくなるため、遺産分割は早期に行うべきとされています。
相続分割の方法について、相続人が3人のみで遺産が現金のみならば「3分割すればいい」と考えられますが、相続するものが土地や建物だった場合は「誰がどれをもらうのか」を決めなければなりません。
1円単位で分けられない物ばかりである場合、相続人が複数人で多い場合であるほど円満に協議を進行させることが難しくなるのも遺産分与の難しい点です。
自分の親にもしものことがあったときこそ、正しい判断がつかなくなるものです。
そんなときのためにも、遺産分割に関わる手続きや必要な書類、相続登記までの流れを把握しておきましょう。
遺産分割を行う場合にまず確認するのが、被相続人が作成した遺言書の有無です。
もし被相続人が作成した遺言書が残されていた場合は、原則的にその内容に従うことになるため必ず最初に確認しなければなりません。
重要な注意点として、遺言書は勝手に開封してはならず、家庭裁判所に提出し相続人立ち会いのもと「検認」を行ってください。
遺言書は被相続人の意志が記されているため、簡単に見つかる場所に保管されていることが多いです。
もし手元になかったとしても、くまなく遺品整理を行った上で遺産分割へと進む必要があるでしょう。
「遺言書はなし」という運びになった場合は、相続人が誰なのかを確定していきます。
すべての遺産は相続人全員で分割しなければならず、1人でも相続人が欠けた中で協議を進めることはできません。
そこで行うのが、被相続人の戸籍謄本の取得です。
もし生前に離婚歴や本拠地の移動をしている場合は、それぞれの市町村から戸籍謄本を郵送で送ってもらう手続きや、場合によってはその土地へ出向くことも必要になります。
親が離婚歴を隠しているケースも珍しくはなく、思わぬ相続人が見つかる可能性もあるのでくまなく調査した上で進めなければなりません。
複雑な過去を持つ被相続人であれば、「相続人調査」を依頼するのもひとつの手段です。
すべての相続人が確定したら、次に行うのが「遺産分割協議」です。
「誰が何を相続するのか」を相続人全員で決めていく、いわば相続手続きの中でも山場と言える部分になります。
財産分与の割合は、「妻は2分の1」「子は4分の1」というのが一般的ですが、そのままスムーズに話し合いが完結するケースは少なく、たいてい難航します。
相続人全員が同意しなければ進めることができず、相続人それぞれが「損をしたくない」という思いから遺産を巡るトラブルに発展するケースが多いです。
現金のように等分しやすい遺産よりも、土地や建物は分けることができない、さらには被相続人との関係性によって分配比率の優遇を主張する人もいるでしょう。
また、相続人が1人でも欠けていれば、その話し合いは無効になってしまいます。
相続人全員の合意が得られるまで時間がかかるケースが多いですが、ここできっちりと遺産分割しないと後々トラブルに発展してしまうので、面倒でも話し合うことが大切です。
遺産分割の協議がまとまったら、「遺産分割協議書」を作成します。
「相続人全員の同意を得た」という証拠になるので、後のトラブル回避のための重要書類となるものです。
相続分割の話し合いが終わってから「やっぱりおかしい」といった意義を立てられたときに、「同意しました」とその相続人の署名と捺印が押されている「遺産分割協議書」が役立つので必ず作成しましょう。
遺産を相続する中に不動産がある場合は、法務局で相続手続きを行います。
相続する不動産の名義を被相続人から相続人へ変更を行う相続登記が必要になるのです。
相続した不動産を売却する場合や、不動産を担保に融資を受けたい場合も、名義変更を行っていなければなりません。
よって、相続登記は早めに済ませる必要があります。
このとき「遺産分割協議書」を求められるので、相続する内容によっては必ず作成してください。
関連記事:遺産分割協議書の作成から法務局に提出するまでの手順
相続人同士で遺産分割協議を行っても難航するケースが多いです。
金銭が関わる問題なので、「もし親族と揉めてしまったらどうすべき?」とどんな人も不安になってしまうでしょう。
実際に相続人同士で遺産を巡るトラブルが起きてしまった場合は、家庭裁判所を通して間に入ってもらい話し合いを行うことになります。
誰もが「損をしたくない」という主張をすれば、たとえ親族とはいえ憎み合ってしまうことにもなりかねません。
遺産分割を終えた後に不満を残さないためにも、相続人それぞれが納得できる手続きを取ることが推奨されます。
遺産分割調停とは、相続人と調停委員(2名)そして裁判官(1名)で話し合いと手続きを行うものです。
遺産分割で揉めてしまった、分配に不満を持った場合は家庭裁判所にて「遺産分割調停」の手続きを取ることができます。
相続人のうち誰か1人または複数人で調停の申立てを行うことで相続人全員に「照会書」という書類が届き、それぞれが資料を提出することになるので当事者同士が会わずに話し合うことができます。
照会書とは、相続人それぞれの相続状況を把握し、鑑定するために必要な資料です。
その後は調停委員が相続人それぞれと面談をし、「分配比率に不満がある」「自分の希望を聞いてほしい」という不満や希望を聞いた上で客観的な指導が行われますが、このとき依頼した弁護士も同席して出頭することもできます。
ただし代理人のみの出頭は認められず、当事者本人が出席しなければなりません。
面談は月に1度のペースで相続人それぞれと行われるので、相続人の人数が多い場合や、話し合いが難航する事案ほど時間がかかります。
かかった期間は「4回の話し合い」「1年以内」だったという意見が多く、最低「半年程度」はかかると考えておくべきです。
なかには「3年以上」の期間を経て終結するというケースも実際に起きています。
遺産分割調停をするときには、被相続人1人につき収入印紙1,200円分がかかります。
別途、郵送のための郵便切手代が発生することもあります。
もし弁護士に調停の依頼をした場合についての弁護費用は、取得できた財産の額の4~16%が相場です。
関連記事:遺産分割調停でかかる費用はどれぐらい?
遺産分割調停に必要な書類は以下の通りです。
関連記事:遺産分割調停の申立てで必要な書類は?
調停でも遺産分割がまとまらない場合は、調停から遺産分割審判へと自動的に移行されます。
その際にはとくに新たな書類を提出する必要はありません。
ただ、遺産分割審判になると家庭裁判所の判断で遺産分割の方法を指定されるために、相続人の意向にそぐわない結果になることがあります。
不服が残る相続内容になってしまう可能性があるので、できる限り話し合いによって解決させることが望ましいです。
相続放棄とは、被相続人の財産を受け取らずに相続の権利を全て放棄することです。
相続放棄をした効果として、財産や不動産などを一切受け取らないだけではなく、被相続人の借金を支払う義務も放棄することができます。
一方遺産分割協議でも、相続を放棄することはできますがこれは相続人の間の話し合いだけのものなので効力が違います。
相続放棄と遺産分割協議での財産放棄には違いがあるのです。
これを知っておかないと、放棄したと思っていた借金も実は相続していたということもあるので注意してください。
遺産分割に期限は設けてありませんが、相続放棄は「相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内」という期限が定められています。
「相続放棄陳述書」を作成し、被相続人の「住民票除票または戸籍附票」と申述人の「戸籍謄本」を添えて家庭裁判所へ提出。
すると「相続放棄申述受理通知書」が送られてきますので、受け取った時点で手続きは完了です。
なお、被相続人と疎遠な関係だったために死亡したことに気づかなかった場合も、知った時点から3カ月以内に相続放棄を行うことで借金を背負うことはありません。
また、生前に相続放棄を行うことは原則的にできません。
相続放棄をすれば借金の相続も放棄することになります。
しかし遺産分割協議で財産を放棄したとしても、相続人の間での話し合いになるので
債権者に対して効力はありません。
ですから、遺産分割協議だけで放棄をしていても借金を返す必要がでてくるのです。
借金を背負いたくなければ、相続放棄をする必要があります。
遺産分割協議との大きな違いは、相続放棄は家庭裁判所への手続きをする必要があるという点です。
遺産分割協議は相続人だけで完結できますが、相続放棄の場合は「放棄します」と宣言しただけでは原則認められません。
被相続人が実は借金を背負っていたというケースもよくあります。
相続手続きの後に知ってしまうと手遅れになるので、遺産分割を行う際には身辺整理を怠らないようにすべきです。
関連記事:相続放棄と遺産分割協議の違いとは?
金銭が関わる遺産分割はトラブルがおきやすいですが、「こんな時はどうすべき?」というケースごとの解決の糸口を探っていきましょう。
亡くなった人が残した遺産の内容によって問題内容も変わります。
よくあるケースを元にご紹介していきますので、「こんなトラブルになるかもしれない」という内容があれば、今のうちにできる対策を検討しておくといいですね。
土地や建物といった不動産を相続する場合、1円単位で分割できないために遺産分割で最も揉めやすいです。
「土地と建物は長男が相続する」と被相続人と口約束していただけでは無効になってしまい、相続登記をしない限り共有分割となってしまいます。
また、株式についても遺産分割の対象となり名義変更を行うことで相続できますが、複雑な手続きや変動する株価に困惑することが多いです。
不動産や株式を遺産分割する方法としては4つあり、物理的に分割する「現物分割」、売却して現金を分割する「換価分割」、1人が相続をして他相続人に対価を支払う「代償分割」、そのまま共有する「共有分割」があります。
相続人それぞれが合意できる手段を選び、できる限り円満に分割することが求められるでしょう。
寄与分とは、被相続人に「介護で世話をした」「食事の世話をした」といったように貢献したことが認められた場合に多めに財産を受け取ることです。
ただその行為が「親の世話をした」といった、扶養義務として当然の行為と評価されてしまうケースが多いため寄与を認められることは簡単なことではありません。
このような寄与分の請求を求める相続人がいるケースであれば、遺産分割調停に持ち越すことが多く、お互いの主張がすれ違ってしまうことが多いです。
寄与分を認めてもらうためには、介護の記録や家業に従事した証明などを残しておくべきでしょう。
相続人の中に多額な贈与を故人から受けた人がいれば「不平等だ」と指摘し、相続人同士で揉めるケースも多いです。
特別受益が発覚した場合は、相続分から特別受益分を差し引く必要がありますが、特別受益の内容が「結婚式の費用」や「進学費用」だった場合は過去までさかのぼって計算しなくてはならいため時間がかかってしまいます。
遺言書に「特別受益と考慮しない」と記されていた場合は除外されるので、遺言書が大きく左右するものです。
生前に話し合っておくことでトラブル回避につながります。
被相続人に異父兄弟・異母兄弟のいわゆる「半血の兄弟」がいた場合は、非常にデリケートな問題な上、遺産分割協議に参加してもらうことも難しくなります。
しかし半血の兄弟であっても相続人に当たり、法律上では通常の兄弟の相続分の2分の1です。
故人が亡くなった後に「半血の兄弟」を名乗る人物から連絡が届くケースもありますが、その場合は当事者同士だけで解決しようとせず第三者に間に入ってもらうべきでしょう。
もし被相続人に借金がある場合は、先ほどお伝えしたように「相続放棄」の手続きをすることで請け負う義務がなくなります。
ただし「3カ月以内に家庭裁判所で手続きを行う」という期限があるので、早急に手続きを行わないと債権者とのトラブルが発生してしまう恐れがあるので注意してください。
被相続人と疎遠になっている場合についても、死亡を知った時点から3カ月以内に相続放棄を取らないと支払い義務が生じてしまうので、いかなる場合も手続きを怠ってはいけません。
法律に則って行う遺産相続にはわかりにくい部分が多いです。
遺産分割についての疑問は尽きることがありません。
ここでは、「遺産相続のここがわからない」というよくある疑問を集めました。
遺産分割は必ず行う必要はなく、「いつまでに」という期限もありません。
しかし相続税の申告は、被相続人が死亡した翌日から10カ月以内が期限となっているため、相続人の確定と遺言書の有無を確認次第、手続きを進める必要があります。
遺産放棄を希望する場合も3カ月以内に行いましょう。
もし相続人が未成年のときは、原則的に親以外の「特別代理人」を選出しなければなりません。
相続人に当てはまっていない「叔父」や「従妹」といった親族から選出もできますが、トラブル回避のためには専門家に依頼した方がいいでしょう。
相続放棄をする場合も特別代理人を立てる必要があり、家庭裁判所へ選任の手続きを行います。
また未成年であっても相続税の支払い義務が生じますが、条件が当てはまれば「未成年者控除」を受けることで負担が軽減できます。
海外在住の相続人がいる場合についても、その人を除いて遺産分割協議を行うことはできません。
書類についても、印鑑証明書の代わりに「サイン証明書」を、戸籍に代わる「相続証明書」などを用意する運びになりますが、手続きが複雑なため専門家に依頼をした方がスムーズに進みます。
また、海外在住の人も相続税の申告が必要になるので忘れずに手続きをしましょう。
父親が他界したが、認知症の母親に財産分与させたくないと考えるケースもよくありますが、認知症や障がいのある人も遺産分割協議に参加する義務があり、認知症患者本人を除いて話し合うことはできません。
認知症の人の相続手続きは、法律的には「成年後見制度」を選任して進めることになり、遺産分割を終えたあとも後見人が認知症本人を保護することになります。
成年後見人の選任や手続きに悩む場合は、早めに専門家へ相談しておくといいでしょう。
居所が不明な場合や連絡の取れない相続人については、弁護士の力を借りることで遺産相続協議への参加を求める方法が最も近道とされています。
もし相続人が行方不明で見つからない場合は、「不在者財産管理人」を弁護人に依頼するケースが多いです。
遺産相続トラブルというのは、金額の大小に関わらず起きてしまう問題です。
「誰が何をどのくらいもらうのか」を生前に話し合うことも難しく、遺言書が見つかったとしても揉めることが多いので注意しましょう。
遺産相続に関わる手続きはとても複雑な上、金銭が関わる問題のためトラブルに発展しやすいです。
たとえ親戚や親兄弟とはいえ、いざとなったら「相続放棄をしてくれ」と言ってきたり、死後に半血の兄弟を名乗る人物が現れたりするケースも実際に起きています。
当事者だけで解決しようとすることで余計な問題が発生し、その分時間もかかってしまうでしょう。
ここまでの遺産分割の流れを読み、思い当たる不安が多い方こそ専門家を頼りましょう。