裁判所HP:
https://www.courts.go.jp/限定承認の手続の流れ
それでは限定承認をする際にどのような流れで進めて行けばよいか確認しましょう。
①家庭裁判所の限定承認の申し立てを行う
まずは必要書類をそろえた時点で家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。この際、法定相続人全員で合意して限定承認の申し立てを行わなければなりません。
また、相続が発生したことを知った日から3ヶ月以内に申し立てを行う必要がありますので、相続人間で早めに話し合いをし、意思疎通を図っておかないと、期限に間に合わなくなってしまう可能性がありますので注意が必要です。
また、限定承認をする場合は財産目録を作成する必要があります。
金融資産や不動産等あらゆる資産を財産目録に記入する必要があり、こちらも時間がかかる作業なので早めに着手するようにしましょう。
②官報で公告する
限定承認の申し立てが家庭裁判所に受理されたら、債権者に対して限定承認をする旨を知らせなければなりません。そのために行うのが官報での公告です。
官報とは政府発行する機関紙のことで、広く世間に知らしめる効果があります。
債権者に広く連絡するために、官報公告で2ヶ月以上掲載することが必要です。
また、債務があることを事前に知っている場合は、官報の公告のみならず限定承認したことを債権者に伝えて債務の弁済を行う必要があります。
③名乗り出た債権者に弁済する
官報での2ヶ月間の広告が終了すると、名乗り出た債権者に対し弁済する必要があります。まずは相続財産で支払えるだけ支払います。
不動産等、現金以外の財産を持っている場合は換金して支払うこととなります。
被相続人の保有する財産で全債務を弁済できない場合にはそれぞれの債権者に債務の割合に応じて弁済が必要です。
また、先取特権や抵当権を有している債務については優先して弁済する必要があります。
先取特権とは債務者の中で優先して弁済を受ける権利で、共益の費用や葬式の費用等が優先される権利です。
例えば、不動産の競売にかかった裁判所に支払う費用は「共益の費用」ですので、他の債務者に優先して支払う必要があります。
一方の抵当権とは住宅ローンなどを契約した際に自宅不動産に担保設定をして、万が一債務者が支払えなくなった際に自宅不動産を売却して弁済を受ける権利です。
抵当権も不動産を担保設定しているため、目的の不動産を売却した資金は優先的に弁済を受けることができます。
④相続人で財産を分ける
名乗り出た債務者に弁済してもなお財産が残る場合には相続人が財産を受け取ることができます。財産は基本的に法定相続割合で配分することとなりますが、話し合いによって異なる割合で配分することも可能です。
まとめ
限定承認は全ての財産を引き継ぐ単純承認や相続放棄に比べると非常に複雑な手続きが必要です。また、相続が発生したことを知った日から3ヶ月という非常に短い期間で相続人全員合意のうえ家庭裁判所に申し立てを行う必要があるため、被相続人が亡くなってからかなり早い段階で検討を進める必要があります。
官報の公告や債務者への弁済等、法律知識が必要となる場面も多くありますので、手続きが難しい場合は弁護士等の専門家に相談してみると良いでしょう。