グッドエフェクト税理士法人 > 記事一覧 > 遺産を相続放棄したいときの3つの注意点と手続きの流れを徹底解説!
相続放棄とは、被相続人(故人)の遺産を一切相続せずにすべてを放棄することです。
借金やローンが多額にある場合、相続放棄を考えるかもしれません。
しかし、安易に相続放棄をすることは危険です。
今回は、相続放棄の注意点や手続きの流れを分かりやすく解説します。
遺産の相続放棄をする前に詳しく理解し、今からできることを始めていきましょう。
相続放棄とは、被相続人(故人)の遺産を一切相続せずにすべてを放棄することです。
人が亡くなると相続権のある法定相続人への相続が開始します。
基本的には法律で決められた法定相続分に従って相続をしていきますが、相続放棄をするとそのすべての遺産を引き継ぐ権利義務がなくなるのです。
一般的に、借金やローンなどの負の遺産が多い場合に相続放棄を選択されます。
たとえば、「親が借金を残して亡くなってしまった」といった場合、借金を相続しないために相続放棄を選ぶことが賢明です。
そうすることで、元から相続人でなかったことになり、借金を肩代わりする必要がなくなります。
しかし、遺産の相続放棄を安易に決定することは危険です。
遺産を相続放棄する前に知っておくべき注意点を次の章で確認しましょう。
遺産の相続放棄を決定する前に知っておくべき注意点が3つあります。
それぞれ詳しく確認していきましょう。
一度相続放棄の手続きをすると、相続放棄の取り消しはできません。
そのため、借金があるからと言って相続放棄の手続きをした後に、たくさんの預金が出てきても「やっぱり相続したい」と撤回することはできないのです。
相続放棄をするのであれば、本当に相続放棄をするのかじっくり検討しましょう。
ただし、以下の場合は相続放棄の取り消しができることがあります。
このような場合、本人の意志が反映されていない可能性があるため、後で撤回できる可能性があります。
しかし、基本的には一度相続放棄すると取り消しはできないので注意しましょう。
相続放棄の手続きをすると、全ての遺産を相続放棄しなければなりません。
たとえば、不動産や預金などのプラスの遺産も相続できなくなるのです。
借金やローンを返したくないという思いから相続放棄をした後に、高額の預金が出てきても相続することはできません。
注意点1でもお伝えしたように、一度相続放棄をすると取り消しはできないからです。
そのため、借金やローンが出てきたからと言って、すぐに相続放棄を決意することはやめましょう。
後々、預金が出てくることもあります。
しっかりと遺産調査を行い、相続すると損をする場合にのみ相続放棄をしましょう。
相続放棄をすると、相続人が変わることがあります。
たとえば、Aさんが亡くなり、奥さんのBさんと息子のCさんが法定相続人だったとしましょう。
このとき、Cさんが遺産を相続放棄すると、法定相続人はAさんの両親に変わるのです。
このように、法定相続人には順位があります。
ただし、配偶者は常に法定相続人です。
Aさんの両親も相続放棄をすると、次はAさんの兄弟が法定相続人となります。
相続放棄をしても、次の法定相続人へ「あなたがAさんの法定相続人です」と連絡がいくわけではありません。
必ず、「相続放棄をしたから、あなたが法定相続人になった」と連絡してあげましょう。
以上、3つの注意点を踏まえて、遺産を相続放棄するべきか検討して下さい。
「遺産を相続放棄すべき」と判断した場合は、次の章で手続きの流れを確認しましょう。
遺産を相続放棄するのであれば、手続きは6つの流れに分けられます。
詳しく手続きの内容を確認していきましょう。
まずは、遺産の調査を行いましょう。
遺産調査は、プラスの遺産とマイナスの遺産のどちらが大きいのかを改めて確認するために行います。
相続放棄をするのであれば、遺産調査が終わってから決定するようにしてください。
思いもよらない遺産が眠っているかもしれません。
遺産の調査は、プラスの遺産とマイナスの遺産の2つに分けて考えましょう。
プラスの遺産調査は、預金・証券・不動産等が考えられます。
まずは、預金通帳や金融機関からの通知書が家の中にないか確認しましょう。
取引している銀行が分かったら、銀行で残高証明書を発行してもらいます。
また、証券会社との取引があるなら、取引内容を確認しましょう。
さらに、不動産は市町村役場で名寄帳を見せてもらって調べることが可能です。
名寄帳とは、固定資産課税台帳のことで、住民が所有している土地や建物を調べることができます。
これらを調べ、詳細なプラスの遺産を洗い出していきましょう。
続いて、マイナスの遺産の調査です。
まずは、サラ金やカード会社、金融機関から支払いに関する通知書が届いていないか確認しましょう。
ほかにも、借入の契約書類や利用明細書、督促状などがあるかもしれません。
また、信用情報機関に対して被相続人の個人信用情報の開示請求をすることもできます。
信用情報機関とは、銀行やカード会社、消費者金融からの借り入れ情報が登録されている機関のことです。
開示請求を行うことで、借金やローンが明らかになります。
プラスの遺産とマイナスの遺産、それぞれの調査が完了したら、相続放棄をするべきかじっくり検討しましょう。
相続放棄することを決めたら、相続放棄申述書を作成していきます。
相続放棄申述書は法定相続人が相続をしたくない理由を述べ、家庭裁判所に提出する書類です。
相続放棄申述書は、家庭裁判所よりダウンロードしましょう。
相続放棄申述書には、相続放棄をする理由と相続の開始を知った日を書かなければなりません。
ここで注意しなければならないのは、相続の開始を知った日についてです。
通常は、被相続人が亡くなった日か亡くなったことの連絡を受けた日になります。
しかし、相続放棄は相続の開始を知った日から3ヶ月以内に行わなければなりません。
相続放棄申述書を提出する日の3ヶ月以上前の日付である場合、受け取ってもらえない可能性があるので注意しましょう。
相続放棄をするときに、家庭裁判所へ提出する書類は以下の通りです。
被相続人と申述人の続柄によっては、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本など、追加で必要な書類もあります。
必ず家庭裁判所へ問い合わせるようにしましょう。
必要な書類が揃ったら、家庭裁判所へ提出しましょう。
提出先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
管轄裁判所を調べるには、家庭裁判所のホームページを確認しましょう。
また、申述をするときには、収入印紙代800円と連絡用の郵便切手代が必要です。
現金を忘れずに持っていきましょう。
家庭裁判所で相続放棄の申述をすると、相続放棄照会書(そうぞくほうきしょうかいしょ)と回答書が送られてきます。
一緒に届くこともあれば、別々で届くこともあるので注意しましょう。
相続放棄照会書とは、相続放棄の申述を行ったことの確認の書類です。
回答書には様々な質問が書かれているので、正直に答えましょう。
もし、相続開始3ヶ月以上が経過してから相続放棄の申述をしたのであれば、「なぜ3ヶ月以内に相続放棄しなかったのか」といった質問があります。
相続が始まっていることを知らなかった、相続財産があることを知らなかったなど、適切な理由を書かなければ相続放棄の申述は認められません。
心配であれば、弁護士に相談してから、回答書に記入しましょう。
回答書の記入が終われば、家庭裁判所へ返送します。
回答書に問題がなければ、家庭裁判所で相続放棄の申述が認められ、相続放棄受理通知書が送られてきます。
この通知書が相続放棄の証明となるので、大切に保管しておきましょう。
関連記事:相続放棄の手続き方法とは?必要書類や手順
遺産を相続放棄するなら、相続開始を知ってから3ヶ月の熟慮期間内に行わなければなりません。
熟慮期間を超えると、相続放棄が認められないため注意しましょう。
しかし、熟慮期間が超えてからも認められるケースが2つあります。
それぞれの場合、どうなるのか確認をしましょう。
熟慮期間が経過した後に、知らなかった借金が出てくる可能性もあります。
この場合、法定相続人が遺産調査の結果を信じたのであれば「やむをえない」と判断され、相続放棄が認められることがあるのです。
しかし、法定相続人による過失で借金に気付かなかった場合は、認められないこともあります。
被相続人の自宅に督促状が届いているのであれば、「知らなかった」では済まされません。
このため、しっかりと遺産調査を行うことが大切です。
後で知人からの借金が分かったとしても、「督促状がなかった」「信用情報機関に調べたがリストに載っていなかった」といった正当な理由がいります。
熟慮期間にしっかりと調査をして対策をしましょう。
死亡したことを知らなかったのであれば、熟慮期間は経過しません。
そもそも、熟慮期間は相続開始を知ってから3ヶ月間です。
そのため、被相続人の死亡を知らされてなかったのであれば、熟慮期間は経過しないのです。
例えば、死亡してから3ヶ月後に死亡を知ったなら、知ったその日から3ヶ月間に相続放棄することができます。
関連記事:相続放棄するときの期限は?過ぎてしまったときの対策方法
相続放棄について詳しく説明してきましたが、遺産の中には相続放棄をしてもトラブルになる可能性があるものがあります。
それは借金と土地・建物です。
どのようなトラブルの可能性があるのか、借金と土地・建物の遺産について詳しく確認しましょう。
被相続人に多額の借金があるなら、相続放棄を選ぶ人が多いでしょう。
しかし、法定相続人全員が相続放棄をしなければ、借金の相続がされてしまいます。
たとえば、亡くなった父に借金があるからと言って長男が相続放棄しても、次男が相続放棄しなければ、次男に借金が相続されてしまうのです。
このように、全員で相続放棄しなければ、相続人に借金の請求や取り立てが続いてしまいます。
また、相続放棄をすることで法定相続人が変わるケースは要注意です。
子どもや妻が全員相続放棄をすると、次は被相続人の親、親が相続放棄すれば被相続人の兄弟姉妹、と相続権は移動します。
家族だけでなく、親せき中で相続放棄をするようにしましょう。
遺産の中には、誰も欲しくない土地や建物があるかもしれません。
また、借金があることを理由に全員が相続放棄をすると土地や建物も、相続することはできなくなります。
しかし、土地や建物を相続しなくても、相続人に管理義務が発生するのです。
これは、民法によって「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない」と定められています。
このような管理義務から逃れるためには、相続財産管理人の申請を行い、国に土地・建物を継承させる必要があるのです。
相続財産管理人が決まるまでは、空き家や土地の管理が必要となります。
空き家が朽ちて近隣住民に迷惑をかけるようなことがあれば、その責任は相続人にあるのです。
このように、相続放棄をしても管理義務が相続人に残っていることを覚えておきましょう。
関連記事:いらない土地を相続放棄する方法は?放棄したらどうなる?
「生前のうちに、今後発生する相続を相続放棄しておきたい」と考える人もいるでしょう。
結論から言うと、生前に相続放棄することはできません。
なぜなら、相続が開始していないからです。
まだ相続が発生していないのに、放棄することはできません。
しかし、「相続はしたくない!」と思うのであれば、以下の3つの方法を代わりに実施しましょう。
1つずつ詳しく確認していきましょう。
遺留分放棄とは、法定相続人に認められる最低限の遺産の取り分をあらかじめ放棄することです。
最低限の遺産の取り分を、遺留分といいます。
遺留分放棄は被相続人が生きている間に行うことができますが、裁判所の許可が必要です。
相続放棄同様に、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所で申し立てます。
また、遺留分放棄が裁判所に認められると、その後取り消しは出来ません。
資産が増える可能性があるならば、わざわざ生前に遺留分放棄をして「やっぱりしなければ良かった」と後悔しないように気を付けましょう。
2つ目の方法は、被相続人による遺言書の作成です。
遺言書には、被相続人が保持する遺産をすべて書き出し、誰に何を相続させたいのか意思表示することができます。
被相続人や他の相続人とよく話し合いをして、被相続人の意思として遺言書を書いてもらいましょう。
万が一、脅して書かせたり遺言書を偽造すると、遺言書としての効力はありません。
他の相続人とのトラブルを避けるためにも、ある程度の遺産の取り分を話し合っておくと良いでしょう。
被相続人の債務が多いのであれば、生前から債務の整理をしておくようにしましょう。
債務整理とは、裁判所を通して債権者と交渉して借金を減額させることです。
たとえば、過去の過払い金の返金を求めたり、自己破産をしたりするケースがあります。
しかし、あくまでも債務の整理は被相続人本人がしなければなりません。
元気なうちに相談に乗りながら、手続きを進めていきましょう。
関連記事:生前に相続放棄はできない!対処法など解説
相続放棄とは、被相続人(故人)の遺産を一切相続せずにすべてを放棄すること。
借金やローンが多額にあるならば、注意すべきことを理解したうえで手続きを進めていきましょう。
また、生前からできることもたくさんあります。
被相続人となる人の意思を尊重しながら、負の遺産を回避しましょう。