相続税の申告の手続き方法
必要な書類を準備できたら、相続税の申告をしていきます。
ここでは9つの段階に分けて説明していきます。
1つ1つクリアしていきましょう。
STEP1.死亡届を提出する
まず死亡届を提出します。死亡者の死亡地・本籍地又は届出人の所在地の市役所、区役所又は町村役場に届け出てください。
被相続人が亡くなった日から相続は開始されますので、速やかに死亡届を提出し、相続税申告にむけて動き始めましょう。
STEP2.相続人の特定を行う
続いて相続人の特定を行います。法定相続人には第1順位から第3順位まで優先順位があります。
第1順位:配偶者と子供(子供が亡くなっている場合は孫)
第2順位:父・母(両親が亡くなっている場合は祖父母)
第3順位:兄弟・姉妹(兄弟・姉妹が亡くなっている場合は甥・姪)
この順位を見て、法定相続人は誰なのか、はっきり特定させなければいけません。
STEP3.相続人の承認を行う
相続人が誰なのか特定出来たら承認を行います。遺産を相続するのか放棄するのかは自由です。
もし負債等マイナスの相続が多ければ放棄や限定承認という選択肢もあります。
仮に法定相続人が放棄をした場合でも、基礎控除額を算出する際は人数に含まれるので注意が必要です。
STEP4.所得税の準確定申告を行う
相続人の承認が終われば、被相続人の所得税の準確定申告を行います。死亡した年の1月1日から死亡した日までに確定した所得金額及び税額を計算して、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に申告と納税をしなければなりません。
これを準確定申告と言います。
STEP5.相続財産の評価を行う
次に相続財産の評価を行います。評価を頼む人が肝心で、選択を間違うと相続税は大きく変わってしまいます。
土地の評価をお願いするのは税金と不動産どちらにも精通している税理士に依頼をしましょう。
不動産鑑定士という専門の不動産専門のプロも存在しますので、よく検討して依頼するようにしてください。
STEP6.財産目録を作成する
財産の評価額が出たら、財産目録を作成します。相続する財産を一覧にする作業です。
財産目録はご自身で作成することも、税理士や司法書士に依頼することも可能です。
ここで財産の記入漏れがあると後々大変なので、気を付けながら進めていきましょう。
STEP7.遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議書を作成するのも忘れてはいけません。相続人同士で話し合い、どの遺産をどの人が相続するのかをはっきりさせておくものです。
ここで話し合いが難航してしまうと相続税の申告にも進めませんので、財産目録を作成している段階である程度分割をし始めたほうが良いでしょう。
STEP8.相続税申告書を提出・相続税を納付する
いよいよ相続税申告書を提出・相続税を納税します。申告書の提出と相続税の納税は、納税地を所轄する税務署です。
申告にあたり必要書類に不備があると二度手間になってしまうため、全て揃っているか確認してから税務署に行きましょう。
STEP9.相続財産の名義変更を行う
申告・納税が済んでから、相続財産の名義変更を行います。相続により土地の名義変更をする場合、登録免許税というものが発生します。
固定資産評価額に一定の税率をかけて算出された金額が登録免許税です。
相続の場合1000分の4、贈与の場合1000分の20をかけます。
相続税の申告は自分でしたほうが良い?
相続税の申告は、自分でする以外にも税理士に頼むことができます。
しかし、手間がない分費用がかかるなどメリットとデメリットがあるのです。
そこで、自分でした方が良いケースと税理士に頼んだ方が良いケースを紹介します。
ご自身がどちらに当てはまるのかみていきましょう。
自分でした方が良い場合
少し面倒な相続税の申告ですが、自分でした方が良い場合があります。それは、以下の3つのケースです。
- 相続人が1人しかいない
- 特例によって相続税がゼロになる
- 相続人同士で絶対に争いがない
順にみていきましょう。
◆ケース1.相続人が1人しかいない
まずは相続人が1人しかいない場合です。相続人が1人しかいない場合は、ご自身のペースで申告準備を進めることができますし、仮に何か手違いがあったとしても他の相続人に迷惑をかけることがありません。
もちろんわからない部分が出てきた際はプロに相談するのも1つの手ですが、この記事を参考にご自身で申告をするのも十分可能です。
◆ケース2.特例によって相続税がゼロになる
小規模宅地の特例や配偶者の税額軽減などの各種特例により相続税がゼロになる場合もご自身で申告を行っても良いでしょう。相続税がゼロになるとわかっているので、リスクもありません。
ただし申告期限が過ぎてしまわないよう、期限内にするように行ってくださいね。
◆ケース3.相続人同士で絶対に争いがない
相続人同士で絶対に争いがないと言いきれる場合も、申告をご自身で済ませる人も多いようです。例えばご主人がなくなり、妻と子が相続する場合などは争いが生まれにくいです。
争わずに済みそうだとわかっている状況ならご自身で申告も問題なく進めることが出来るでしょう。
税理士に頼んだほうが良い場合
ご自身で申告しやすい場合の反対で相続人同士で揉めてしまいそうな場合や、ご自身で申告するのは不安が大きい方は税理士に頼むと良いでしょう。集める必要書類等も多く、なるべく早くスッキリさせたい場合もそうです。
また遺産の中に土地があり、正確な価格がわからない場合も税理士に相談したほうがスムーズに進みます。
1億円以上の大きな遺産ともなれば、ちょっとした手続きのミスで100万円単位の損出をしてしまうこともあるのです。
絶対に損をしたくない!という場合にも、その道のプロである税理士に頼むことをおすすめします。
相続税の申告を自分でするときの注意点
では相続税の申告を自分でするときはどんなことに注意をすべきなのでしょうか。
3つの注意点を挙げますので、1つ1つ理解を深めておきましょう。
注意点1.相続税を過大に申告しないようにする
まず相続税を過大に申告しないようにしてください。例えば、納税した相続税が過大であったとわかった場合、更生の請求といって払い戻しをしてもらう手続きが必要です。
ただしこの請求は5年間しか有効ではありません。
5年以上経って、払い過ぎていたかも?と思っても払い戻しに応じてもらえないのです。
正しい金額の相続税を納めれば、再び手続きをとることもないので正しい申告を心がけましょう。
注意点2.税務調査の確率が高まる
またご自身で申告をされた人は、税務調査の確率が高まることを頭に入れておいてください。相続税を申告した人の約15%が税務調査を受けます。
税理士をつけた人に比べ、ご自身で申告した場合は何かミスがあるかもしれないと思われ、税務調査の確率が上がるのです。
仮に税務調査を受けるようなことがあっても、ミスがなければ問題ありません。
調べられても大丈夫なように申告する際は細心の注意を払いましょう。
注意点3.過少申告すると加算税がかかる
もしも過少申告になってしまった場合は、加算税というものがかかってきてしまいます。本来であれば払わなくても良いお金です。
もちろんそれが故意で行われたものでなかったとしても、加算税から逃れることはできないので気を付けてくださいね。
【Q&A】相続税の申告に関する疑問点を解消
最後に相続税の申告に関する疑問点を解消していきましょう。
基本的なこともお話していきますので、まずはこちらを理解したうえで申告の手続き準備をしてください。
Q1.申告をしないとどうなるの?
相続税を申告しない場合、無申告加算税と言って、さらに支払う税金が増えてしまいます。税務署に指摘される前に自ら申告した場合には相続税の5%を加算税、税務署から指摘されてから申告した場合には15~20%の加算税が加わります。
500万円の相続税であれば25万円以上もの加算税となりますので「知らなかった」「忘れていた」では済まされません。
Q2.遺産の相続税申告の期限はあるの?
遺産の相続税申告の期限は、被相続人が亡くなられてから10ヶ月という期限が定められています。こちらの期限を過ぎてしまうと上記のように無申告加算税が発生してしまうので、期限内に申告出来るよう計画的に進めていきましょう。
Q3.税務署で相談できるの?
相続税の申告で悩んだ場合には、税務署で無料相談が可能です。税務署としても正しく納税してもらいたいわけですから、親身になって相談に乗ってくれますよ。
平日の日中であれば電話相談や面談が可能です。
事前にわからないことや事実関係を把握して相談に行くと話がスムーズに進みます。
1から説明してもらおうとすると時間がかかってしまうので、ある程度はご自身で調べてから相談に行くと良いでしょう。
Q4.申告書の書き方は決まっているの?
申告書の書き方は、決まっています。国税庁の公式サイトで、相続税申告書の記載例があるので確認しておきましょう。
ご自身がエクセルで作ったものなどは無効になりますので注意が必要です。
Q5.申告が間違っていた場合はどうしたらいいの?
ご自身で申告をする際など、申告を終えてから間違っていたことに気付くこともあるかと思います。そんな時は修正申告といって申告が間違っていたと申請する必要があります。
支払った相続税が過大でも過少でもです。
過大であれば払い戻しが認められますし、過少であれば過少申告加算税として多めに支払うことになります。
ただし修正申告の期限は5年間です。
間違ったと気付いた場合、速やかに申告をした税務署で修正申告を行いましょう。
まとめ
相続税がある場合の申告方法を紹介しました。まずはご自身が相続税を支払う必要があるのかどうかを計算・把握することが最優先です。
支払う場合は必要な書類がたくさんありますので、計画的に書類収集にとりかかりましょう。
相続税の申告は税理士に依頼するも良し、ご自身でするも良しです。
ただし間違っていた場合には加算税となってしまうこともあるため、全ての遺産を把握し、計算ミスがないよう気を付けてください。