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相続税の申告は必要?相続税の計算方法と自分でできる申告方法をご紹介

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遺産を相続すると、相続税という税金を支払わなくてはならない人がいます。

割合としては遺産相続した数%の人なので、そこまで多くはありません。

ただし支払いをうっかり忘れていたり、自分は対象じゃないだろうと間違った自己判断をしてしまうと延滞税や加算税といった本来よりも高額な税金を支払うことになってしまいます。

ここでは相続税の申告手続き方法や申告するときの注意点を紹介していきます。

相続税の正しい知識を身に付け、正しい申告を行いましょう。

遺産の相続税の申告が必要な人とは?

まず遺産の相続税の申告が必要な人とはどのような人を指すのでしょうか。
遺産の相続税は、基礎控除額を上回る相続が発生した場合に必要となります。
基礎控除額は法定相続人の人数によって金額が変わってくるため、一概にいくら以上の相続とは言えません。
基礎控除額の計算式はこちらです。
3000万円+(600万円×法定相続人の数)=相続税の基礎控除額
このように、法定相続人の数がわかれば基礎控除額を算出することができるので、ご自身の状況に当てはめて計算をしてください。
 

遺産の相続税の計算方法

続いて遺産の相続税の計算方法についてです。
ここで注意したい間違いは、遺産に相続税の税率をかけてしまうことです。
正しくは遺産から基礎控除額を差し引いた金額が課税対象となります。
計算方法は、以下です。
遺産-基礎控除額=課税対象
課税対象×相続税の税率=相続税
また税率は、以下の速算表を参考にしてください。
 
例えば7000万円の遺産を母・子2人が相続した例で計算をしてみます。
(遺産総額)7,000万円-(基礎控除額)4,800万円=(課税対象)2,200万円
母:2,200万円×2分の1=1,100万円 1,100万円×(相続税率)15%-(控除額)50万円=115万円
子1:2,200万円×4分の1=550万円 550×(相続税率)10%=55万円
子2:2,200万円×4分の1=550万円 550×(相続税率)10%=55万円
115+55+55=225万円
この場合の相続税は、3人合わせると225万円になります。
 

相続税を申告する前の準備

相続税の金額がはっきりしたら相続税の申告を行います。
申告前の準備として必要書類を集めなければいけません。
相続税申告の必要書類は、たくさんあるので確認していきましょう。
相続税申告に必要な書類はとにかく量が多いです。
書類を収集するだけで気が遠くなってしまいそうですが、それぞれの状況に応じで集めていきましょう。

1.全ての人が必要な書類

まずは、相続税の申告をする際に誰もが必要となる書類です。
  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等
  • 被相続人の住民票の除票
  • 被相続人の戸籍の附票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票
  • 相続人の戸籍の附票
  • 相続人全員の印鑑証明書 ※印鑑証明書以外は各2通ずつ用意:税務署提出用1通、名義変更手続用1通
役所で取得できるものが多いので、まとめて取得しましょう。

2.現金を相続する人が必要な書類

次に大部分の人が当てはまる現金を相続するときに必要な書類です。 手元にあるものだけでなく、金融機関に預けているものも対象になります。
  • 預金残高証明書
  • 既経過利息計算書
  • 過去5年分の通帳・定期預金の証書
  • 手元現金
こちらは、金融機関で揃えることができます。

3.土地を相続する人が必要な書類

土地を相続する場合には、以下の書類が必要です。
  • 登記簿謄本(全部事項証明書)
  • 地積測量図及び公図の写し
  • 固定資産税評価証明書
  • 住宅地図
  • 名寄帳(固定資産課税台帳)
  • 賃貸借契約書(貸地・借地がある場合に必要)
  • 農業委員会の証明書(他人の農地を小作している場合に必要)
地積測量図及び公図の写しは、法務局で取得できます。
住宅地図は、図書館で観覧やコピーをするか住宅地図を発行しているゼンリンの住宅地図プリントサービスを利用すると良いでしょう。
また固定資産税評価証明書と名寄帳(固定資産課税台帳)は、市町村の役所で閲覧・取得することが可能です。
 

4.建物を相続する方が必要な書類:建物関係

建物を相続する場合には、以下の書類が必要です。
  • 登記簿謄本(全部事項証明書)
  • 固定資産税評価証明書
  • 売買契約書、間取り図等
  • 名寄帳(固定資産課税台帳)
  • 賃貸借契約書
固定資産税評価証明書と名寄帳(固定資産課税台帳)は、市町村の役所で閲覧・取得することが可能です。

5.株式を相続する人が必要な書類

株式を相続する場合には、上場か非上場かで必要書類も変わってきます。 【上場株式を相続する場合】
  • 証券会社の預り証明書(残高証明書)
  • 登録証明書(残高証明書)
  • 配当金の支払通知書
  • 被相続人の最近5年間の取引明細
【非上場株式を相続する場合】
  • 過去3期分の決算書(勘定内訳書等の添付書類を含む)
  • 税務申告書(法人税、地方税、消費税等)の写し
これらの必要書類は、証券会社等に連絡し、発行してもらいます。

6.投資信託・その他金融商品を相続する人が必要な書類

預貯金や株式以外の投資信託や金融商品を相続する場合は、以下の書類が必要です。
  • 残高証明書
  • 投資信託についての信託財産留保額及び個別元本額
投資信託などの金融商品がある場合は、対象の会社に連絡し確認することが望ましいでしょう。

7.生命保険の保険金を相続する人が必要な書類

生命保険金は、相続財産ではなく“みなし相続財産”という扱いで税務上の課税対象になります。 必要な書類は以下です。
  • 生命保険金支払通知書
  • 生命保険証書のコピー
  • 火災保険等の保険証書コピー
  • 解約返戻金のわかる資料
生命保険金支払通知書は、保険会社から送られてきます。
また、生命保険証書や火災保険等の保険証書は自宅で保管しているので確認してコピーをしてください。

8.その他

ここまでに含まれないその他の場合に必要な書類は以下です。
(1)自動車を相続する場合
  • 車検証のコピー
  • 車種、色、走行距離
(2)退職金を相続する場合
  • 支払通知書(源泉徴収票)
(3)電話加入権を相続する場合
  • 電話番号と所在場所のわかるもの
(4)ゴルフ会員権・リゾート会員権を相続する場合
  • 手元にある預託金証書又は証券のコピー
(5)貸付金、前払金等を相続する場合
  • 金銭消費貸借契約書及び残高のわかるもののコピー
(6)未収となっている給与、地代、家賃を相続する場合
  • 契約書や支払予定のわかる証憑
このように必要な書類は数多くあります。
1つ1つ確認し、準備するのはとても大変です。
時間がない人や面倒くさいと思う人は、弁護士に依頼すると良いでしょう。
弁護士に依頼すれば、相続人の調査から申告まで任せることができます。
 

相続税の申告の手続き方法

必要な書類を準備できたら、相続税の申告をしていきます。
ここでは9つの段階に分けて説明していきます。
1つ1つクリアしていきましょう。

STEP1.死亡届を提出する

まず死亡届を提出します。
死亡者の死亡地・本籍地又は届出人の所在地の市役所、区役所又は町村役場に届け出てください。
被相続人が亡くなった日から相続は開始されますので、速やかに死亡届を提出し、相続税申告にむけて動き始めましょう。

STEP2.相続人の特定を行う

続いて相続人の特定を行います。
法定相続人には第1順位から第3順位まで優先順位があります。
第1順位:配偶者と子供(子供が亡くなっている場合は孫)
第2順位:父・母(両親が亡くなっている場合は祖父母)
第3順位:兄弟・姉妹(兄弟・姉妹が亡くなっている場合は甥・姪)
この順位を見て、法定相続人は誰なのか、はっきり特定させなければいけません。

STEP3.相続人の承認を行う

相続人が誰なのか特定出来たら承認を行います。
遺産を相続するのか放棄するのかは自由です。
もし負債等マイナスの相続が多ければ放棄や限定承認という選択肢もあります。
仮に法定相続人が放棄をした場合でも、基礎控除額を算出する際は人数に含まれるので注意が必要です。

STEP4.所得税の準確定申告を行う

相続人の承認が終われば、被相続人の所得税の準確定申告を行います。
死亡した年の1月1日から死亡した日までに確定した所得金額及び税額を計算して、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に申告と納税をしなければなりません。
これを準確定申告と言います。

STEP5.相続財産の評価を行う

次に相続財産の評価を行います。
評価を頼む人が肝心で、選択を間違うと相続税は大きく変わってしまいます。
土地の評価をお願いするのは税金と不動産どちらにも精通している税理士に依頼をしましょう。
不動産鑑定士という専門の不動産専門のプロも存在しますので、よく検討して依頼するようにしてください。

STEP6.財産目録を作成する

財産の評価額が出たら、財産目録を作成します。
相続する財産を一覧にする作業です。
財産目録はご自身で作成することも、税理士や司法書士に依頼することも可能です。
ここで財産の記入漏れがあると後々大変なので、気を付けながら進めていきましょう。

STEP7.遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議書を作成するのも忘れてはいけません。
相続人同士で話し合い、どの遺産をどの人が相続するのかをはっきりさせておくものです。
ここで話し合いが難航してしまうと相続税の申告にも進めませんので、財産目録を作成している段階である程度分割をし始めたほうが良いでしょう。

STEP8.相続税申告書を提出・相続税を納付する

いよいよ相続税申告書を提出・相続税を納税します。
国税庁の公式サイトにある記載例を参考に相続税申告書を記載していきましょう。
申告書の提出と相続税の納税は、納税地を所轄する税務署です。
申告にあたり必要書類に不備があると二度手間になってしまうため、全て揃っているか確認してから税務署に行きましょう。

STEP9.相続財産の名義変更を行う

申告・納税が済んでから、相続財産の名義変更を行います。
相続により土地の名義変更をする場合、登録免許税というものが発生します。
固定資産評価額に一定の税率をかけて算出された金額が登録免許税です。
相続の場合1000分の4、贈与の場合1000分の20をかけます。
 
 

相続税の申告は自分でしたほうが良い?

相続税の申告は、自分でする以外にも税理士に頼むことができます。
しかし、手間がない分費用がかかるなどメリットとデメリットがあるのです。
そこで、自分でした方が良いケースと税理士に頼んだ方が良いケースを紹介します。
ご自身がどちらに当てはまるのかみていきましょう。

自分でした方が良い場合

少し面倒な相続税の申告ですが、自分でした方が良い場合があります。
それは、以下の3つのケースです。
  1. 相続人が1人しかいない
  2. 特例によって相続税がゼロになる
  3. 相続人同士で絶対に争いがない
順にみていきましょう。

◆ケース1.相続人が1人しかいない

まずは相続人が1人しかいない場合です。
相続人が1人しかいない場合は、ご自身のペースで申告準備を進めることができますし、仮に何か手違いがあったとしても他の相続人に迷惑をかけることがありません。
もちろんわからない部分が出てきた際はプロに相談するのも1つの手ですが、この記事を参考にご自身で申告をするのも十分可能です。

◆ケース2.特例によって相続税がゼロになる

小規模宅地の特例や配偶者の税額軽減などの各種特例により相続税がゼロになる場合もご自身で申告を行っても良いでしょう。
相続税がゼロになるとわかっているので、リスクもありません。
ただし申告期限が過ぎてしまわないよう、期限内にするように行ってくださいね。

◆ケース3.相続人同士で絶対に争いがない

相続人同士で絶対に争いがないと言いきれる場合も、申告をご自身で済ませる人も多いようです。
例えばご主人がなくなり、妻と子が相続する場合などは争いが生まれにくいです。
争わずに済みそうだとわかっている状況ならご自身で申告も問題なく進めることが出来るでしょう。

税理士に頼んだほうが良い場合

ご自身で申告しやすい場合の反対で相続人同士で揉めてしまいそうな場合や、ご自身で申告するのは不安が大きい方は税理士に頼むと良いでしょう。
集める必要書類等も多く、なるべく早くスッキリさせたい場合もそうです。
また遺産の中に土地があり、正確な価格がわからない場合も税理士に相談したほうがスムーズに進みます。
1億円以上の大きな遺産ともなれば、ちょっとした手続きのミスで100万円単位の損出をしてしまうこともあるのです。
絶対に損をしたくない!という場合にも、その道のプロである税理士に頼むことをおすすめします。
 

相続税の申告を自分でするときの注意点

では相続税の申告を自分でするときはどんなことに注意をすべきなのでしょうか。
3つの注意点を挙げますので、1つ1つ理解を深めておきましょう。

注意点1.相続税を過大に申告しないようにする

まず相続税を過大に申告しないようにしてください。
例えば、納税した相続税が過大であったとわかった場合、更生の請求といって払い戻しをしてもらう手続きが必要です。
ただしこの請求は5年間しか有効ではありません。
5年以上経って、払い過ぎていたかも?と思っても払い戻しに応じてもらえないのです。
正しい金額の相続税を納めれば、再び手続きをとることもないので正しい申告を心がけましょう。

注意点2.税務調査の確率が高まる

またご自身で申告をされた人は、税務調査の確率が高まることを頭に入れておいてください。
相続税を申告した人の約15%が税務調査を受けます。
税理士をつけた人に比べ、ご自身で申告した場合は何かミスがあるかもしれないと思われ、税務調査の確率が上がるのです。
仮に税務調査を受けるようなことがあっても、ミスがなければ問題ありません。
調べられても大丈夫なように申告する際は細心の注意を払いましょう。

注意点3.過少申告すると加算税がかかる

もしも過少申告になってしまった場合は、加算税というものがかかってきてしまいます。
本来であれば払わなくても良いお金です。
もちろんそれが故意で行われたものでなかったとしても、加算税から逃れることはできないので気を付けてくださいね。
 

【Q&A】相続税の申告に関する疑問点を解消

最後に相続税の申告に関する疑問点を解消していきましょう。
基本的なこともお話していきますので、まずはこちらを理解したうえで申告の手続き準備をしてください。

Q1.申告をしないとどうなるの?

相続税を申告しない場合、無申告加算税と言って、さらに支払う税金が増えてしまいます。
税務署に指摘される前に自ら申告した場合には相続税の5%を加算税、税務署から指摘されてから申告した場合には15~20%の加算税が加わります。
500万円の相続税であれば25万円以上もの加算税となりますので「知らなかった」「忘れていた」では済まされません。

Q2.遺産の相続税申告の期限はあるの?

遺産の相続税申告の期限は、被相続人が亡くなられてから10ヶ月という期限が定められています。
こちらの期限を過ぎてしまうと上記のように無申告加算税が発生してしまうので、期限内に申告出来るよう計画的に進めていきましょう。
 

Q3.税務署で相談できるの?

相続税の申告で悩んだ場合には、税務署で無料相談が可能です。
税務署としても正しく納税してもらいたいわけですから、親身になって相談に乗ってくれますよ。
平日の日中であれば電話相談や面談が可能です。
事前にわからないことや事実関係を把握して相談に行くと話がスムーズに進みます。
1から説明してもらおうとすると時間がかかってしまうので、ある程度はご自身で調べてから相談に行くと良いでしょう。

Q4.申告書の書き方は決まっているの?

申告書の書き方は、決まっています。
国税庁の公式サイトで、相続税申告書の記載例があるので確認しておきましょう。
ご自身がエクセルで作ったものなどは無効になりますので注意が必要です。

Q5.申告が間違っていた場合はどうしたらいいの?

ご自身で申告をする際など、申告を終えてから間違っていたことに気付くこともあるかと思います。
そんな時は修正申告といって申告が間違っていたと申請する必要があります。
支払った相続税が過大でも過少でもです。
過大であれば払い戻しが認められますし、過少であれば過少申告加算税として多めに支払うことになります。
ただし修正申告の期限は5年間です。
間違ったと気付いた場合、速やかに申告をした税務署で修正申告を行いましょう。
 

まとめ

相続税がある場合の申告方法を紹介しました。
まずはご自身が相続税を支払う必要があるのかどうかを計算・把握することが最優先です。
支払う場合は必要な書類がたくさんありますので、計画的に書類収集にとりかかりましょう。
相続税の申告は税理士に依頼するも良し、ご自身でするも良しです。
ただし間違っていた場合には加算税となってしまうこともあるため、全ての遺産を把握し、計算ミスがないよう気を付けてください。