グッドエフェクト税理士法人 > 記事一覧 > 相続税の負担軽減対策に生前贈与は有効?メリット・デメリットを知って生前贈与しよう
遺産を相続する際にかかる相続税は、普段の生活ではなかなか意識しないものです。
しかし、できることなら相続税を少なくしたいと誰もが思いますよね。
相続税は、生前贈与をすることで減らすことができるのです。
ここでは、生前贈与するメリット・デメリット、生前贈与の方法や注意点などについてお話していきます。
生前贈与の知識を深め、損のない相続をしていきましょう。
相続税は、相続財産の総額が基礎控除額以下の場合には負担軽減対策をしなくても良いです。
そもそも相続税には、基礎控除額というものが設けられています。
基礎控除額は以下の計算式で求められます。
3,000万円+(法定相続人×600万円)
基礎控除額は、法定相続人の人数により変動します。
相続財産が基礎控除額以下であれば、相続税がかかりません。
ですから、生前贈与等の対策はしなくても良いのです。
被相続人がご健在のうちから、遺産総額がどの程度になるかを把握しておけば、生前贈与の対策が必要なのか見えてくるでしょう。
関連記事:生前贈与の税率を簡単に計算する方法
遺産総額が基礎控除額よりも多くなる場合、相続税が発生します。
しかし、負担軽減対策をすることで支払う税額が少なくなるので、対策をしてみると良いですね。
相続税の負担軽減対策には、生前贈与がおすすめです。
なぜなら被相続人がお亡くなりになってからではとれない対策だからです。
生前贈与にはいくつか種類があり、複数の生前贈与を利用することで、大きな負担軽減効果を生みます。
後から「こんな方法があったなんて知らなかった!」「生前のうちから取り掛かれば良かった!」と後悔しても遅いのです。
ご自身の状況にあてはめ、利用できそうな生前贈与があればぜひ活用していきましょう。
まずは、生前贈与のメリットを知りましょう。
生前贈与のメリットは3つあります。
それでは、順にみていきましょう。
生前贈与の目的は、相続時にかかる税金を減らすことです。
つまり相続時、被相続人がお亡くなりになる前までに相続税の対象となる財産を減らしておけることが最大のメリットといえます。
相続税の対象となるのは、現金はもちろん土地や建物・貴金属や骨董品など様々です。
被相続人がお亡くなりになった時点で全て所有していたのでは、相続税の対象となってしまいます。
少しずつ贈与して手持ちの財産を減らしていくことが賢いのですね。
1年間で110万円以下であれば贈与税はかかりません。
贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に、贈与により取得した財産の合計額が110万円以下であれば非課税となります。
つまり被相続人が毎年110万円ずつ5年間に渡り贈与していけば、550万円の負担軽減対策がとれるというわけです。
しかし、110万円という数字には注意が必要です。
例えば父親から100万円、母親から50万円の贈与を受けた場合、合計150万円になるため110万円を超えた40万円の部分は課税対象になります。
また、被相続人が子どもと孫10名など複数人に対して110万円ずつ贈与することは問題ありません。
相続する相手を選ぶことができるのも生前贈与ならではのメリットといえます。
被相続人がお亡くなりになってからの相続となれば、法定相続人に遺産が渡ります。
法定相続人は、戸籍上の配偶者や子ども・孫や両親となるため、相手を選ぶことはできません。
中には、事実婚のように内縁関係にある妻や夫がいるにも関わらず、戸籍上妻や夫ではないため、遺産を相続できなかったという方も多いものです。
絶縁状態になっている子どもより、身の回りの世話をしてくれた他人に財産を託したいという場合もあるでしょう。
相続時のトラブルを回避するためにも、生前から遺産を振り分けておくのは大切なことといえます。
メリットの反面、生前贈与にはデメリットとなることもあります。
生前贈与のデメリットは3つです。
メリットだけではなく、デメリットも知り生前贈与を進めましょう。
まず生前贈与をするためには、贈与契約書を作成する必要があります。
贈与契約書を作成する理由は、贈与された証明になるからです。
税務調査が入ったとしても、贈与契約書を交わしていれば、贈与の事実であったことを証明できます。
贈与契約書自体は、税理士や弁護士を通さずにご自身で作成も可能ですし、内容も難しいものではありません。
贈与契約書の作成に手間がかかりデメリットと思われる方は、税理士や弁護士にお願いするのも良いでしょう。
相続開始3年以内の贈与に関しては、相続税を支払う対象になってしまいます。
被相続人がお亡くなりになる前の3年以内の贈与はなかったことにされてしまうのです。
これは死期が迫り、慌てて生前贈与をして相続税を免れようとする人に対処するためです。
相続開始3年以内にさかのぼり、贈与された財産は相続税申告の対象となることを覚えておきましょう。
関連記事:相続開始前3年以内の贈与は無効?贈与加算できる方法とは
仮に110万円を10年間お子さんに贈与していった場合、手元に残る現金は少なくなっていきます。
相続税の負担軽減とはいえ、老後の資金が減っていくのはいささか不安になりますよね。
人間誰しもいつお亡くなりになるか分かりません。
負担軽減ばかりに気を取られ、「贈与し過ぎてしまった!」とならないよう注意が必要です。
被相続人が亡くなられた時に法定相続人は何人になるのか、基礎控除額はいくらになるのか、計算してみると良いですね。
基礎控除額に収まる財産分は手元に残しておくよう、計画的に進めていきましょう。
関連記事:生前贈与を活用して相続税の負担軽減|メリットとデメリットは?
では生前贈与の方法にはどのような種類があるのでしょうか?
生前贈与の方法には、主に以下の4つの方法があります。
どういった方法があなたにぴったりなのかみていきましょう。
暦年贈与とは、年間110万円まで贈与税が非課税となる生前贈与の方法です。
内容が重複しますが、その年の1月1日から12月31日までに贈与という形で財産を譲る場合に適応される贈与の仕方です。
贈与された額が合計で110万円以上にならないように注意して贈与を行えば、贈与税をかけずに財産分与が行えます。
暦年贈与では、贈与契約書は毎年交わさなくてはなりませんが、雛形さえ作ってしまえば少しの修正で済むので手間はかからないでしょう。
結婚や子育て資金という名目で贈与することも可能です。
その場合、一括で1,000万円まで贈与税がかからないため、暦年贈与のように毎年贈与契約書を交わす手間はなくなります。
ただし結婚に関しての贈与は、300万円までです。
手続きは金融機関の窓口で行われ、管理契約を結びます。 子どもや孫の専用口座を作り、一括で贈与資金を入金すれば贈与は完了です。
贈与を受けた子どもや孫は、結婚や子育てに関する費用としてお金を使ったことを証明する領収書等を金融機関に提出すれば、お金をおろすことが可能です。
祖父母や親から30歳未満の子どもや孫に教育資金として、非課税で贈与することも可能です。
結婚・子育て資金よりも高額の1,500万円が上限となっています。
教育資金とは幅広い用途が認められており、学費はもちろん塾や習い事・習い事に使う道具なども該当します。
結婚・子育て資金と同じように、金融機関で専用口座作成・管理契約を結べば準備は完了です。
ここで注意したいのは、教育資金贈与信託は30歳で契約終了になってしまうことです。
使い切らなかった残額は、贈与税が課されることを覚えておきましょう。
住宅取得等資金贈与という方法もあります。
簡単にいうと、子どもや孫がマイホームを建てたり、増築する場合に使う資金として現金を贈与することです。
現時点では、最大1,500万円までの贈与が非課税として認められており、省エネ等住宅や契約の終結日によって金額は異なります。
生前贈与をするときの流れも知っておくといざ利用する際に便利です。
ここでは5つの流れに分けて、ご説明していきます。
それでは順にみていきましょう。
最初に行いたいのは、生前贈与の計画を立てることです。
ご自身が持つ財産がいくらになるのか、土地の評価額等も含め把握をしていきましょう。
その上で、どの程度の財産を生前贈与するべきか考えていきます。
負担軽減を意識するあまり無計画に贈与してしまうと老後の資金不足が起こってしまうこともあります。
贈与を受ける人と協議することも大切です。
例えば、子育て資金や教育資金として贈与したい場合、贈与を受ける人はどう考えているか意見を聞く必要があります。
契約期間が過ぎてしまえば、贈与税として税金を納める義務が発生します。
どの程度の資金が必要なのか、しっかりと話をして予測をつけておくと良いでしょう。
贈与する側・贈与される側の意向が合えば、贈与契約書の作成に入っていきます。
贈与契約書はご自身で作成も可能ですし、税理士・弁護士に依頼することも可能です。
贈与契約書には以下の内容を含めて作成していきましょう。
トラブル回避のためにも、必ず贈与契約書の作成が終わってから財産の引き渡しを行うことをおすすめします。
準備が整ったら、贈与する財産の引き渡しに入ります。
必ず贈与契約書に記載されている渡し方で贈与するようにして下さい。
土地や建物などを贈与する場合には、名義変更の手続きも進めていきましょう。
必要があれば、贈与税の申告や納税を行います。
生前贈与をする人は、主に負担軽減対策の手段として行う人が多いです。
中には非課税の110万円より金額が大きくなってしまったり、土地や建物の贈与などで贈与税が発生してしまうことがあります。
贈与税の申告・納税を忘れてしまうと、後から加税されてしまうこともあるため、必ず贈与税を支払う必要はあるのか確認しましょう。
関連記事:【必読】生前贈与に必要な手続きや注意点
最後に生前贈与をするときの注意点をお話していきます。
大事なポイントなので、改めてご確認ください。
まず注意したいのが、定期贈与とみなされないようにすることです。
暦年贈与では、110万円まで非課税となります。
110万円を10年間贈与した場合、1,100万円の負担軽減になりますよね。
これは大きな負担軽減対策となるのですが、毎年同じ額を10年繰り返し贈与すると「最初から1,100万円の負担軽減を目的に贈与したのではないか?」とみなされ、贈与税が課されることがあります。
このように一定期間、一定の財産を贈与することを定期贈与といい、定期贈与かと疑われることを避けなければなりません。
定期贈与ではないと思われるためには、毎年贈与する度に贈与契約書を作成すると良いです。
連年贈与であっても、きちんと毎年贈与契約書を作成すれば問題はありません。
そして贈与する時期や金額に変化をつけるのも有効な手段となります。
贈与税が発生する場合には、必ず申告を行い、納税をしなければいけません。
贈与税がかかるとわかっていながら申告をしない場合や、うっかり申告をし忘れた場合でも、同じように遅延税や加算税という税金が上乗せされます。
せっかく負担軽減効果を狙って生前贈与をしたにも関わらず、余計な税金を払わなければならなくなったのでは本末転倒です。
贈与をする際には、贈与税がかからないのか、かかるのであればどのくらいの金額なのかしっかり把握することが大切です。
必要があれば期限内に申告・納税を行いましょう。
生前贈与には、暦年贈与をはじめ様々な方法があるとお話しました。
また贈与税がかからないものに関しては問題ありませんが、贈与する金額・贈与するものによっては贈与税が発生する場合もあります。
手続きが難しく、贈与税に関しても自信がないという方は、専門家に相談すると良いでしょう。
税理士はもちろん、相続に関して経験豊富な弁護士に相談するのも良いです。
相続は大きな金額が動くので、失敗を避けるためにも相談を検討してみてはいかがでしょうか。
相続税の負担軽減対策として、生前贈与のお話をしてきました。
毎年110万円までであれば贈与税の負担がなかったり、子育て資金・教育資金として1,000万円ほどの大きな贈与もできます。
生前贈与をする際には必ず贈与契約書を作成し、贈与される側ともよく話し合うことが大切です。
また、贈与税の面から見ても贈与契約書は重要になってくるので、必ず作成するようにしてください。
作成の仕方がわからない場合や、手間がかかり面倒くさい場合にも、税理士や弁護士等に頼れば力になってくれます。
生前贈与を計画的に進め、損のない相続にしていきましょう。