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基礎控除によって変わる遺産の相続税|申告や納税を判断するポイントをご紹介

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遺産を相続することになった際、高額な遺産が入ってきて戸惑ってしまう方も多いかと思います。

相続するにあたり覚えておきたいのは相続税と基礎控除についてです。

まずは、ご自分が相続した遺産は相続税を支払う必要があるのかないのかをしっかり把握しておくことが大切です。

ここでは、相続税の基礎控除の計算方法や、基礎控除以外に相続税が軽減される場合などをご紹介していきます。

相続税の知識をつけ、相続税の支払いを確実にしていきましょう。

相続税の基礎控除とは

 
まずは相続税の基礎控除について基本的なことを覚えていきましょう。
相続税の課税対象にはどんなものがあるのか、相続税の支払いを免れる基礎控除とは一体何なのかを理解する必要があります。
ご自分の相続した遺産をリストアップし、見比べながら読み進めてみてくださいね。

相続税の課税対象

最初に相続税の課税対象を確認しておきます。
対象は不動産・建物・金融財産・その他に分けられ、以下のようなものがあります。
 
 
【不動産】
  • 宅地
  • 山林
  • 畑等の農地
  • 敷地権
  • 借地権
  • 地上権
【建物】
  • 区分建物
  • 駐車場
  • 倉庫
  • 借家権
【金融財産】
  • 現金
  • 預貯金
  • 株式
  • 投資信託
  • 公社債
【その他】
  • 自動車
  • 家具
  • 電話加入権
  • ゴルフ会員権
  • リゾート会員権
  • 著作権
  • 商標権
  • 特許権
  • 宝石等貴金属・骨董品
  • 入院保険金(被相続人が受取人の契約)
  • 売掛金や損害賠償請求権等債権者としての権利
このように細々したものも含まれますので、分類に困った際は専門家の方に相談しておきましょう。

相続税の基礎控除とは

相続税の課税対象を確認したところで、基礎控除についてです。
相続税は、遺産の総額が一定の金額を超えなければ税金がかかりません。
相続税の基礎控除とは、相続税がかからない範囲の金額のことです。
また、相続税がかかる場合は遺産の総額から基礎控除分を差し引いた金額に対して課税された金額になります。

相続税を支払う人はどのくらいいるの?

では実際相続税を支払う人はどのくらいいるのでしょうか。
実は相続税を支払う人は、多くはありません。
平成27年・28年の年で見ると相続税を支払う人は遺産相続した全体の8%で、9割以上の人は相続税を払う対象にはなっていないのです。
とはいえ「だいたいの人が納めていないのだから、うちも大丈夫だろう」と憶測で納税を怠ってしまった場合、滞納金が発生することもあります。
ご自分の相続する遺産を把握し、相続税を支払う必要があるのかどうか見極めるようにしてください。
 

相続税の基礎控除の計算方法とは

 
続いて相続税の基礎控除の計算方法をお話していきます。
相続税の基礎控除額は次の計算で算出することが出来ます。
3,000万円+600万円×法定相続人の数=相続税の基礎控除額
つまり法定相続人が単独であった場合は、3,600万円の相続まで基礎控除の対象、法定相続人が2人である場合は4,200万円、3人である場合は4,800万円、4人である場合は5,400万円というように金額が大きくなっていきます。
ちなみに法定相続人の数というのは、相続放棄をした相続人や財産を承認しない相続人の人数も含めて計算をするので注意が必要です。
 

相続税の申告や納税を判断する手順

 
では、具体的に相続税の申告や納税を判断する手順についてです。
やるべきことを4つのステップに分けてお話します。
順序立てて進めていくことで、無駄がなくスムーズに手続きしていきましょう。

STEP1.遺産を計算する

最初に遺産の計算をします。
先ほどの課税対象一覧を参考に、遺産の総額がいくらになるのか計算してみましょう。
ここで遺産の見落とし等があると手続きのやり直しが発生するため、時間をかけてでもしっかり遺産の全てを把握してください。
この時点で相続税の基礎控除範囲内であったとしても油断は禁物です。
この後のステップで基礎控除額を超えてしまう可能性もあることを頭に入れておきましょう。

STEP2.生前贈与額を加える

次に生前贈与額を加えます。
相続税の節税に生前から少しずつ贈与していく方法があります。
110万円の上限までであれば贈与税もかからないからです。
ただし相続開始日(非相続人が亡くなられた日)から遡り、3年以内の贈与は110万円以内の贈与であっても相続税の対象になります。
例えば2020年1月1日に亡くなられた場合、2017年1月1日以降に贈与された金額を遺産に加えましょう。

STEP3.相続時精算課税制度で贈与された財産を加える

相続時精算課税制度で贈与された財産を加える作業も忘れてはいけません。
相続時精算課税制度とは、父母または祖父母から子や孫への生前贈与について選択できる制度です。
60歳以上の直系尊属(父母または祖父母)から20歳以上の相続人または孫への2,500万円までの贈与であれば贈与税は非課税となり、2,500万円を超えた部分に対して一律20%の贈与税が課税されます。
つまり相続時精算課税制度を利用すると、以下の計算式で算出することが出来ます。
課税される贈与税=(贈与金額-2,500万円)×20%
ただし、一度相続時精算課税制度を利用すると、生前贈与の110万円の非課税枠を使うことができなくなってしまうので注意が必要です。

STEP4.遺産の合計と相続税の基礎控除額を比べる

ステップ1~3の項目が全て終了したら、遺産の合計金額が算出されます。
そこで初めて相続税の基礎控除額を比べることが出来ます。
法定相続人の数と共に基礎控除額を確認しましょう。

法定相続人の数:基礎控除額

1人:3,600万円
2人:4,200万円
3人:4,800万円
4人:5,400万円
5人:6,000万円

遺産の合計が基礎控除額よりも多い場合には、相続税がかかり申告が必要となります。

申告が必要な場合は税理士に依頼すると良い

相続税が発生し、申告が必要な場合になった際は税理士に依頼することをおすすめします。
もちろん税理士に依頼をするとなれば費用が掛かります。
しかしその費用を支払う以上の節税が出来る可能性があるのです。
例えば、土地の評価額を出してもらうにしても、相続税専門の税理士に依頼することで数百万円~数千万円の差額が発生することが多々起こります。
経験豊富でしっかりとした知識を兼ね揃えている税理士に依頼することは、結果的に節税に繋がるのです。
 

基礎控除以外に相続税が軽減される場合とは?

 
基礎控除以外に相続税が軽減される場合も併せて覚えておくと役立つことがあります。
ここでは6つの軽減される条件をご紹介します。
当てはまるものがあれば、相続税が軽減されると頭に入れておくと良いでしょう。

1.配偶者の税額軽減

まずは、配偶者の税額軽減です。
これは配偶者控除と言って、配偶者が相続する財産が評価額1億6,000万円まで非課税になります。
1億6,000万円を超えたとしても、法定相続分の範囲内であれば相続税はかかりません。
簡単に言ってしまうと、配偶者が遺産を全て相続する場合は、1億6000万円以内でもそれ以上の金額でも相続税はかからないということです。
 

2.未成年者の税額控除

2つ目は、未成年者の税額控除です。
相続する人が未成年であった場合、20歳になるまで1年につき10万円の控除額が与えられます。
例えば相続した年齢が15歳6ヶ月だった場合6ヶ月は切り捨てされるため、20歳になるまでの5年となります。
そして、10万円×5年=50万円の控除が受けられるのです。
ただし日本国籍があり、相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していた人という条件があるため注意が必要です。

3.障害者の税額控除

3つ目は、障害者の税額控除です。
障害者控除というのは、85歳未満の障害者が相続人になる際に適応される控除制度です。
控除額は一般障害者と特別障害者という区分によって違いがあり、特別障害者は一般障害者に比べ障害が重くなります。 控除額の計算方法は、以下です。

  • 一般障害者の場合:(85歳-相続した年齢)×10万円
  • 特別障害者の場合:(85歳-相続した年齢)×20万円

4.小規模宅地の特例

4つ目は、小規模宅地の特例です。
小規模宅地の特例は、相続した土地にかかる相続税を減額することができます。
小規模宅地の特例に該当するのは、亡くなった人が住んでいた土地・事業をしていた土地・貸していた土地の3種類です。
特例に該当させるためには一定の条件があります。
例えば亡くなった人が住んでいた土地を例に挙げると、配偶者が相続するのであれば申告期限までの継続要件は特にありませんが、同居親族であれば居住継続・所有継続が条件です。
つまり上記の3つの土地には特例で減税出来る場合がありますが、条件もあることを覚えておきましょう。

5.生命保険

5つ目は、生命保険です。
生命保険についても保険契約者と被保険者が同一で、保険受取人が配偶者等であれば相続の区分に分類されます。
ただし死亡保険金は、遺された家族の生活を守ると言う意味合いがあるので法定相続人の人数に比例して非課税の金額が発生します。
非課税分の金額を算出するには【500万円×法定相続人の数】です。
例えば3人の法定相続人がいて2,000万円の死亡保険金が下りた際には、1,500万円は非課税ということになります。
残りの500万円も基礎控除額の中に収まっていれば課税の対象にはなりません。
 

6.退職金

6つ目は、退職金です。
もし被相続人が退職金を手にする前に亡くなってしまった場合、本来支給されるはずだった退職手当金や功労金は相続財産とみなされて相続税の課税対象となります。
しかし、こちらにも減税のポイントがあり、【500万円×法定相続人の数】で算出される金額は課税対象から外されます。
退職金の全てが課税対象になると言うわけではありませんので、安心してください。
 

相続税の基礎控除の改正を確認

 
相続税の基礎控除については、平成25年度税制改正によって一部改正が行われました。
相続はいざご自身が当事者にならないと、遠い話のようであまり関心が沸かないかもしれません。
上記と内容が重複するところもありますが、大切なことなので改正された部分をあらためて確認していきましょう。

相続税の基礎控除の改正について

平成27年1月1日以降、税制改正により相続税の基礎控除額が引き下げられました。
改正前と改正後の基礎控除額の違いは以下になります。
  • 改正前:5,000万円+1,000万円×法定相続人数
  • 改正後:3,000万円+600万円×法定相続人数
このように、改正に伴い基礎控除額が引き下げられ、課税対象となる人が大幅に増えることになりました。
 

【Q&A】相続税の基礎控除に関する疑問点を解消

最後に相続税の基礎控除に関する疑問点を解消しておきましょう。
こんな場合はどうする?という場面を想定しているので、参考にしてください。

Q1.相続放棄をした人がいる場合はどうなる?

法定相続人が相続放棄すると、600万円にかける人数が減ってしまうので、基礎控除額が減ってしまうと思われがちです。
しかし相続放棄をした場合でも、法定相続人の数として変動はなく、放棄をした人の数も含めて計算します。
ですので、相続放棄をした人がいても相続人の数は変わらないので基礎控除も変わりありません。

Q2.相続人が兄弟しかいない場合はどうなる?

相続人が兄弟しかいない場合、兄弟に相続されます。
亡くなった人に対して、子ども・孫・両親・祖父母のいずれかがいる場合は兄弟は法定相続人には当たりません。
また兄弟が複数いる場合は、遺産が均等になるように分配をします。
そして、兄弟が相続する場合には、相続税額が2割加算されてしまいます。
例えば、相続税額が2,000万円の場合、2,000万円×1.2=2,400万円の相続税を納める必要があるのです。
 

Q3.相続税の基礎控除額を増やす方法はある?

相続税の基礎控除額を増やす方法があれば、節税のために覚えておきたいですよね。
方法としては、養子をとることで法定相続人の数を増やします。
よくある手法としては孫を養子にする方法です。
ただし養子をとればとるほど基礎控除額が上がるというわけではありません。
相続順位が高順位のグループ人数が法定相続人の上限となりますので、実際には欠格や廃除のような特別な理由がなければ孫を養子にしても基礎控除額が増えることはないのです。
 

まとめ

ここまで相続税の基礎控除に関する知識を深めてきました。
まずは遺産をしっかり把握し、生前贈与額や相続時精算課税制度で贈与された財産の加算も忘れずに行ってください。
また基礎控除以外に減額されるものに該当するか調べるのも大切です。
相続税を支払わなくて済むに越したことはありませんが、もし相続税を支払うことになる場合は、相続税を専門に扱う税理士を探しましょう。
出来るだけ損をしない納税になるよう税理士選びは慎重に行ってください。